今月のレビュー作品

「Batman: Faith」(Batman: Legends of the Dark Knight #21〜23)/高木 亮

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 〜誰が自警団員を見張るのか?〜

タイトル:「Batman: Faith」(Batman: Legends of the Dark Knight #21〜23)
推薦者:高木 亮
  

 石田衣良という作家をご存じだろうか。「池袋ウエストゲートパーク」(文春文庫)の作者だと言えば、わかってもらえる方も多いだろう。この小説は、池袋でトラブルシューターをしている主人公マコトが出会ったさまざまな事件を描いた連作短編集である。数年前にTOKIOの長瀬智也主演でテレビドラマ化されており、そちらをご覧になった方もいるだろう。また、「少年計数機」や「骨音」といった続編も発売され、コミック化もされているほどの人気シリーズである。
 さて、「池袋ウエストゲートパーク」では、マコトは事件が持ち込まれると、基本的に自分たちの手で解決しようとする。池袋の世界に大きな影響力を持つ二つの組織(警察と暴力団)と関わることもあるが、たいていの場合は、池袋にたむろしている不良少年(いわゆるカラーギャング)の手を借りて、事件を解決に導いていく。
 これはアメコミの世界ではお馴染みのビジランティズム(自警行為)である。自警というと何やらわかりにくいが、要するに警察の手を借りずに、自分たちの手で犯罪を取り締まることである。日本のテレビドラマで言えば「ザ・ハングマン」や「必殺仕事人」、あるいは映画「狂気の桜」などが、これに当てはまるだろう。ただ、自警行為というのは諸刃の剣であり、一応"正しい"行為ではあるものの、それが暴走した場合には、悪となりうる危険性もはらんでいる。今回紹介する「Batman: Faith」は、そんな歪んだ自警行為を描いた作品である。

 麻薬常習者の青年ジョン・エイカーズは、コスタスという麻薬組織のボスに殺されかけたところをバットマン(ブルース・ウェイン)に救われる。ジョンは病院で手当を受け一命をとりとめるが、麻薬でトリップ状態になったジョンは、ベッドの上で奇妙な幻覚を見る。それは、"ゴッサムシティを悪の手から守る"という聖なる使命を魔神バットマンから授かるという内容のものだった。
 やがて、退院したジョンは己の使命に目覚め、街の各地から若者を集め、コウモリのマークをシンボルにした「バットメン」という名の自警団を結成する。ジョンと仲間たちは暴力的な方法で犯罪者を粛正していくが、徐々に一般市民の信頼を勝ち取るようになっていく。
 一方、バットマンはコスタスの行方を追っていたが、逆にコスタスの仕掛けた罠にはまり、窮地に陥ってしまう。しかし、その場に駆けつけた「バットメン」の協力を得て、コスタスの部下を一網打尽にすることができた。たった一人で活動を続けていたバットマンにとって、仲間の存在は非常に心強いものだった。
 その後、警察がコスタスの屋敷を強制捜査することになり、麻薬組織のボス、コスタスは遂に逮捕されることになった。強制捜査の際の銃撃戦で負傷したコスタスは病院送りとなり、バットマンは警察よりも先に情報を得るために病室へと忍び込む。ところが、そこにピストルを持ったジョンが仲間とともに乱入してきた。ジョンは正義の名のもとにコスタスを殺すべきだと主張し、もはや師であるはずのバットマンの言葉に耳を貸そうとはしない。バットマンはなんとかジョンを思いとどまらせようとするが、激高したジョンはバットマンに向けて至近距離からピストルを発射すると、床に倒れたバットマンを残して、コスタスを連行して立ち去っていく。
 重傷を負ったバットマンは、レスリー・トンプキンス医師(ブルース・ウェインの後見人でもある)から応急処置を受けると、レスリーの制止を振り切って、ジョンの後を追う。バットマンにとっては、たとえ悪人であろうとも、コスタスの命を奪うことは決して許されないことであり、何としてもジョンを阻止しなければならないのだ…。

 さきほど、自警行為はアメコミではお馴染みだと書いたが、それもそのはず、アメコミヒーローのほとんどは自警団員か民間兵士なのである。彼らは彼らなりの正義感を持っており、それが時として衝突し、ヒーロー同士で火花を散らすことになる。今回紹介した作品以外にも、「Batman: Knightsend」「Batman/Punisher」「Batman/Daredevil」など、正義を巡る価値観のぶつかり合いというのは決してめずらしいテーマではなく、むしろアメコミ(特にクロスオーバー作品)にとっては頻出テーマの一つと言える。バットマンとスーパーマンの葛藤というのは、その最たるものであろう。
 正義というのは、唯一絶対の正解がありそうに見えながら、実際にはなかなか(万人にとっての)正解が出せない難しい問題である。最近の北朝鮮の核開発疑惑に関するアメリカ側のコメントを聞いていると、特にそう思わずにはいられない。極端な言い方をすると、アメリカは自分は核兵器を持っていてもいいが、他国が核兵器を持つことは許さないと言っているのである。…おいおい、それって"正しい"正義なの?
 

【作品データ】

Published by DC Comics
Written by Mike W. Barr
Art by Bart Sears & Randy Elliott
発売:1991年(※今のところ、合本は発売されていない)

 

過去のレビュー作品

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'02.09.24
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'02.08.26
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'02.06.29
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'02.06.17
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'02.06.2
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'02.05.19
THE AMAZING SPIDER-MAN: THE SAGA OF ALIEN COSTUME
BLADE II  (「TOMB OF DRACURA」45〜53号)

'02.05.3
SPIDER-MAN: THE DEATH OF GWEN STACY

'02.04.26
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'02.04.12
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'02.03.22
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'02.03.8
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'02.02.28
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'02.02.08
Breakfast After Noon

'02.01.16
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2002年のレビュー
2001年以前レビュー




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