今月のレビュー作品

 Queen&Country Operation: Broken Ground/阿部 静

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タイトル:Queen&Country Operation: Broken Ground
推薦者:阿部 静
  

 英国情報部(SIS)に所属する作戦部の特殊部隊「マインダーズ」。聞こえは立派だが冷戦後の軍備縮小のアオリをくらったかフィールドエージェントはたったの三名。任務は略奪、誘拐、そして暗殺といった汚れ仕事。その三人のうちの紅一点、マインダー2のコードネームを持つタラ・チェイスの今回の任務は、動乱のコソボに潜入しロシアの大物退役軍人を暗殺すること。実はこれは、タラの上司である作戦部長ポール・クロッカーがCIAとの交換条件として独断で引き受けた極秘任務であった。負傷しながらもタラは任務を完遂しコソボを脱出する。

 その数日後、SISは本部ビルにロケットランチャーをぶち込まれるという報復テロに見舞われ、タラ自身の首には百万ドルの賞金がかけられていることが判明する。皮肉なことに事件は対外情報機関であるSISの手を離れ、国内保安を担当するMI5の管轄下に置かれる。事の発端がタラの非公式任務にあることを知るMI5は、逆にタラを囮に国内に潜入したテロリストを捕獲しようと目論む。しかしSIS作戦部長クロッカーは、捕獲などという手ぬるいものではなく、死による制裁を要求するのだった。

 介入、報復、制裁の愚かしいイタチごっこ。同じ組織内での上と下の意見の相違。身内の足を引っ張り合う泥沼合戦(身内であるはずのSISとMI5が互いを信用せず、それぞれ他国の同義機関であるCIAとFBIを頼るという滑稽さ)。派手なアクションシーンよりもスパイの本領である情報戦の描写に重きが置かれていることもあり、読んでいてもいまいち爽快感に欠ける。これでヒロインのタラがもちっと感情の起伏が激しいタイプならまだ救いがあるのだが、ティム・セールの描くTP表紙の眼光鋭いこの女は一体誰ですかって言いたくなるくらい無表情、無愛想。自宅の部屋とオフィスの机の等しいどっちゃらけ具合くらいしか愛すべき点がない。家族もなく、恋人もいない。タラには任務しかない。それがどんなに汚い仕事であっても。

 そんなタラの能力を高く評価し、絶大な信頼を置いているのが、この物語の影の主人公とも言えるクロッカー作戦部長。上からは「君の替えは利く」と脅され、下からは「独断、えこひいき、ワンマン上司」と陰口を叩かれる悲しい中間管理職なのだが、独断で暗殺計画を遂行して上役の怒りを買ったり、情報を得るために美貌のCIA職員にヘビのようにしつこく付きまとったり、部下の命を守るために自腹で武装品(?)を買い与えたりと、スジを通すためならば手段を選ばないその姿勢には不思議と共感を覚える。 「国がいざというとき彼らを守ってやらないで、どうして彼らの忠誠を得ることが出来ましょうか。我々は反撃すべきです」という彼の過激な主張は、国のために汚れ仕事を一手に引き受けるマインダーズの心情を推し量ってのものである。「理想の上司」「最低の上司」コンテストなんかやったら、多分そのどちらにもノミネートされること間違いなし。

 作者のグレッグ・ルッカは、1978年の英国製TVシリーズ「サンドバッガーズ」の大ファンで、Queen&Countryはこのスパイドラマをモデルにしたとインタビューで語っている。もちろん現代では冷戦は終結しており、東側やコミュニスト、独裁者といった明確な「敵」が存在しない情勢なので、書くほうも描きづらいし読むほうもなんだかスカッとしない。しかしご安心あれ。続巻の「Operation: Morningstar」では、昨年の9月11日以降全世界にその名を轟かせた、あの組織が敵として登場する。「ブルカを着たまま諜報活動はムリ」との理由で一人置いてけぼりを喰らったタラの名誉挽回は成るのか?というわけで、この巻で釈然としないものを感じた人は、次巻も読むときっといいことがあるでしょう。  

【作品データ】

Writer:Greg Rucka 
Artist:Steve Rolston
Publisher:Oni Press
出版年:2002年3月

 

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2002年のレビュー
2001年以前レビュー




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