今月のレビュー作品

 the Incredible Hulk: Return of the Monster/高木 亮

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〜誰がその怪物に逆らって戦うことができるのか
(「ヨハネの黙示録」より)〜

 

タイトル:the Incredible Hulk: Return of the Monster
推薦者:高木 亮
  

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 主人公の男は殺人の罪を着せられ、警察から追われる身である。男は警察の追及を逃れながら、各地を転々とし、逃亡生活を続けている。だが、実は男は無実であり、それは巧妙に仕組まれた罠だった。事件の背後には、人知を越えた「怪物」が関与しており、さらに、その怪物を巡って謎の秘密組織が暗躍し、恐るべき国家規模の陰謀が進行していたのだった…。と言っても、これは、人気漫画家・浦沢直樹の傑作サスペンス『MONSTER』のことではない。今回紹介するのは、マーヴル・コミック最大のモンスター…ハルクである。
 
 ハルクことブルース・バナー博士は、人目を忍ぶ逃亡生活を送っていた。なぜなら、ハルクがビルを破壊した際に、リッキー・マイヤーズという幼い子供が巻き添えになって死亡し、その殺人罪に問われているからだった。ブルースは外見を変えるためにスキンヘッドになり、ノートパソコンを使って唯一の協力者であるドク・サムソンと連絡を取りながら、全米各地を転々としていた。放浪生活の途上で、ブルースはさまざまな人々と出会い、時にハルクの力を利用しながら、彼らの人生をより良いものへと導いていく。だが、政府絡みの謎の組織がハルク逮捕(抹殺?)のために動きだし、二人の男女を送り込む。一人はスレイターという超一流の傭兵で、もう一人はサンドラ・バーデュゴという死刑囚である。しかも、このサンドラという女性は、殺してもすぐに復活するという不死の能力を兼ね備えている奇怪な妖女でもあった。やがて、ブルースは追いつめられるが、それは逃亡生活の終焉を意味するものではなかった。殺されたリッキー少年とサンドラとの関係が明らかになり、一連の事件が巨大な陰謀であったことが暴露された時、ブルースは全ての真相を解き明かすため、新たなる旅立ちを決意するのだった…。
 
 怪物を語る時に欠かせないキーワードの一つは「孤独」である。冒頭で紹介した『MONSTER』に登場する殺人鬼ヨハンも、それを追う天才外科医テンマも、そしてハルクも孤独な存在である。一般社会に溶け込めない異質の存在であるがゆえに、孤独を余儀なくされている。怪物だから孤独なのか、孤独だから怪物なのか、その両者は分かちがたく結びついている。もっとも、ハルク誕生のきっかけとなったのは大量破壊兵器ガンマ爆弾であり、そうしたものを作り出した人間こそ、真の「怪物」ではないかとも思えるのだが…。
 そして、もう一つのキーワードは「神」である。なぜ全知全能であるはずの神は、人間に害をもたらし、平和な社会を脅かすような怪物を作りたもうたのか? ここには、神と人間と怪物(悪魔)という三者関係の神学的問題が秘められていると考えることもできる。
 この二つのキーワードは、怪物テーマの古典である『フランケンシュタイン』において、すでに見ることができ、本作品もそうした系譜を継ぐものであると言えよう。
 
 本書はホラー作家のブルース・ジョーンズがライターに就任し、ハルクの人気を一躍高めた一連のストーリーを合本化したものである。この1冊で完結したストーリーではなく、「the Incredible Hulk: Boiling Point」という続編に続いているので、興味を持たれた方は、こちらのほうも併読をお薦めする。『MONSTER』においては、主人公のテンマは怪物ヨハンを殺すために旅を続けていた。しかし、ハルクの世界においては、主人公ブルースと怪物ハルクは同一人物であり、決してそこから逃げ出すことはできない。ブルースの旅に終わりが訪れることはないのだ…。
 

【作品データ】

 
 【作品データ】
Published by Marvel Comics
Written by Bruce Jones
Art by John Romita Jr.
発売:2002年
関連サイト:http://www.incrediblehulk.com/
      http://www.thehulk.com/

 

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