今月のレビュー作品

Superman: Where Is Thy Sting ?/高木 亮

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タイトル:Superman: Where Is Thy Sting ?
推薦者:高木 亮

〜死を打ち負かすほどの、強い生きる力。人はそれを愛と呼ぶ〜


 グリム童話のなかに「死神の名づけ親」という話がある。ある貧しい男に息子が生まれる。男は名づけ親を探すが、なかなか見つからない。やがて、男の前に姿を現した死神を見て、男はこう考える。「神様や悪魔ならば、不公平なことをするが、死神ならば公平に扱ってくれるだろう」 こうして、男は死神から、重病人が助かるかどうかを見分ける力を与えられ、それをもとに大金を手に入れて、立派な名づけ親を見つけ出したのだった。その後、男は死神をだまし、その報いとして自らが死んでしまうのだが、ここで注目したいのは、男が死神を選んだ理由−死神は公平な存在だ−である。
 全ての生きとし生けるものは、必ず死を迎える。古来より、人は生と死の意味について、さまざまに考察を巡らせてきた。生の側面に目を向けて、「いかに生きるか」という命題に答えを与えようとしたのが倫理学ならば、その逆に、死の方向からアプローチして、「死後の世界とはどういうものか」という命題に答えを与えようとしたのが宗教と言えるだろう。生者が死について考察すること自体、本末転倒だと言えなくもないが、現実に生きている我々にとって、避けられない問題であることは確かである。今回紹介する「Superman: Where Is Thy Sting ?」は、あのスーパーマンが死神と対面する話である。
 
 メトロポリスの守護者スーパーマン。正義と真実を信じ、より良き明日をめざして献身的な努力を続ける彼の姿は、あらゆる人間にとって希望の象徴だった。そんな彼が、ある日突然、奇妙な幻覚に襲われるようになる。それは惑星クリプトンの破滅する光景であったり、地球に送られた幼子の自分が死ぬ姿であったりした。やがて、スーパーマンの前に、不気味な死神が現れる。死神は、どんな危機や苦難に直面しても、それを乗り越える彼の強靱な生命を奪いに来たのだという。スーパーマンはそれが本物の死神なのか、それとも、"自分が惑星クリプトンの最後の生存者である"という無意識の罪悪感が見せる幻覚なのか判別できないまま、さらなる悪夢に苦しめられることになる。
 一度は死神を撃退したスーパーマンだったが、死神はさらに容赦ない攻撃を仕掛けてくる。死神はスーパーマンを遠未来へと連れていき、地球の最後の姿を見せつけ、さらに宇宙そのものから全生命体が絶滅する終末の光景を見せつけられる。全宇宙最後の生存者となった彼は、遂に自分自身の死を迎えることになる。ブラックホールの中心部に吸い込まれ、徐々に意識を失っていくスーパーマン。だが、死を目前に控えた彼の脳裏には、ある人物の姿が浮かび上がる…。
 
 生存者症候群(サバイバー・シンドローム)という心理的な症状がある。例えば、大事故などに巻き込まれて、多数の人間が亡くなっているのに、自分だけが生き残ったような場合、その人物は「なぜ自分だけが生き残ってしまったのか」という罪悪感に囚われることがあるという。スーパーマンは惑星クリプトンの最後の生き残りであり、そうした意味では、罪悪感も人一倍強いのかもしれない。この作品は「スーパーマンと死神が対決するホラーアクション」として読むこともできるし、「スーパーマンが己の罪悪感を克服する心理治療ドラマ」として読むこともできる。いずれにしろ、死神に翻弄され続けてきたスーパーマンが、死から生へと見事な大逆転を遂げる物語のラストは、読者にすがすがしいカタルシスを残すことだろう。
 この作品の脚本は、『Spider-Man: Kraven's Last Hunt』や『Moonshadow』を手がけたJ・M・デマティスである。彼ならではの叙情性豊かなライティングは、非常に読みやすく、かつ感情移入しやすいものに仕上がっている。また、作画のほうは『Spawn: Dark Ages』などを手がけたライアン・シャープである。彼の描く生物と機械を融合させたようなクリーチャー・デザインも要注目である。
 ちなみに題名の「Where Is Thy Sting ?」というのは、新約聖書のなかの「コリント人への手紙」15章55節から採ったものである(該当個所を読んでも、宗教的な意味はさっぱりわからないのだか、要するに、キリストが復活することで、死を克服したことを意味するらしい)。

【作品データ】

Published by DC Comics
Written by J. M. DeMatteis
Art by Liam McCormack-Sharp
発売:2001年
関連サイト:http://www.supermansupersite.com/
      http://superman.ws/fos/

 

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