今月のレビュー作品

スパイダーマン:グエン・ステーシーの死 推薦者:高木亮
ムーミン・コミック          推薦者:戸辺沙穂

レビューコーナーでは皆さんのお便りをお待ちしています!


〜愛する者を失った時、我々は自分の一部を失うのかもしれない〜

タイトル:スパイダーマン:グエン・ステーシーの死
推薦者:高木亮

 現在、この地球上には60億もの人間が生きているという。今この瞬間にも、世界 のどこかで新しい命が芽生え、別の場所では誰かが息をひきとっているのだろう。 生と死はあらゆる生命体にとって必然的な成り行きであり、空気のように当たり前 の物事である。それが老衰のような自然死である場合には、残された者にもある程度は心の準備ができるであろう。しかし、それが不慮の事故死や突然の病死だった としたら、どうであろうか? あるいは、本人の意思とは無関係に、何者かの悪意 によって殺害されたとしたら?

 この物語のプロットは単純である。大学生のピーター・パーカーは、恋人のグエ ンや親友のハリー、そしてメリー・ジェーンたちに囲まれながら、相変わらず多感 な日々を過ごしていた。なかでもピーターの心を悩ませているのは、親友ハリーの ことである。ハリーは度重なる心労から逃れるために、一度はやめたはずのドラッ グに再び手を出すようになっていた。そして、そんな息子の身を案じる父親のノー マン・オズボーンも、精神的なストレスが積み重なり、遂に、記憶の底に埋もれて いたはずのグリーン・ゴブリンという悪のペルソナを呼び覚ましてしまう。宿敵スパイダーマンの正体がピーターであることを知っているゴブリンは、グエンを誘拐 し、スパイダーマンをおびき出す。恋人がゴブリンに誘拐されたことを知ったスパイダーマンは、急いで現場に駆けつける。しかし、あと少しで救い出せると思った のも束の間、グエンはあっけなく命を落としてしまう。

 何の予告もなく、ふいに目の前に突きつけられる「死」という現実。作中のスパ イダーマンも読者の我々も、突然の事態に驚きとまどい、ただ激情の嵐に呑み込ま れるだけ。愛する女性を目の前で失ったスパイダーマンは、心のなかにぽっかりと空いた穴を、グリーン・ゴブリンに対する復讐で埋めようとする。ゴブリンを取り 逃がしたスパイダーマンは執念の捜査で敵の居場所を突き止め、ゴブリンの隠れ家へと乗り込んでいく。両者は壮絶な死闘を繰り広げるが、やがて、グリーン・ゴブ リンの事故死という因果応報とも呼べる形で、物語は一応の結末を迎える。しかし 、ピーターの心の空洞は埋まることがなく、それは読者も同じである。  この話が最初に発売されたのは1973年。発売から四半世紀を経た今でもなお、こ の話は多くの読者の心をつかんで離さない。その理由は、グエンの死が我々読者に 人生の(残酷な)真実を教えてくれるからではないだろうか? 今も昔も不慮の事 故や突然の事件に巻き込まれて命を落とす人は数多く存在する。残された者は深い悲しみを背負いながらも、その後の人生を歩んでいかねばならない。悲しみによっ てできた空洞を、怒りで埋め尽くすことなどできはしない。愛する者の「死」という事実を受け入れて、その後の自分の「生」をいかに生きるべきか。そこに本当の 癒しがあるのではないか。この話は我々にそんなことを問いかけているようにも思 える。

 なお、この作品は1979年に一度邦訳されたことがあるが(光文社マーベルコミッ クス「スパイダーマン」第7巻に収録)、現在では入手困難であり、是非とも新訳で発売してほしい1冊である

【作品データ】
Written by Gerry Conway
Illustrated by Gil Kane
MARVEL COMICS
発売:1973年にコミック発売。1999年に合本が発売
受賞:(特になし)

関連サイト:http://www.marvel.com/
              http://www.spidermancrawlspace.com/

*高木亮さんのレビューは連載です。随時更新されますのでご期待ください。


タイトル:ムーミン・コミック
推薦者:戸辺沙穂

 はじめまして。今日私が紹介したいのは、「ムーミン・コミックス」です。アメコミじゃないんですけど・・・。アメリカだけじゃなく、ヨーロッパ系のコミックが好きで、でも外国語が(英語も・・・)いまいちわからない私にとって、この日本語版はひさびさのヒット!ぜひ、おすすめしたくなりました。

ムーミンといえば「ねえムーミン、こっちむいて」でおなじみの、あのアニメのムーミンがありましたね。実はわたしはあのアニメって見たことがないんですが(キオクがないだけかも)、原作者のトーベ・ヤンソンさんがクレームをつけたというほど原作と違っていたそうです。だから、これは同じムーミンなんですけど、多分みなさんの思っているムーミンとは少し、ちがうのではないでしょうか。 その原作の作者のヤンソンさんが、弟さんと描いたというこのまんがは、まんがとしてもすごく完成度が高いと思う。絵も、絵本のように、繊細で、かわいくて、それでいて何となく力強い感じ。そのへんが、北欧って感じがします。多分、自然のきびしいところだから、あの力強さが出てくるのかな。ムーミンたちも、かなりたくましいのですよ、実は。
話も、とても面白いです。ムーミンっていうと、みんな、罪のないメルヘンだって思うらしいけど、違うんです。けっこう、いろんな変なキャラが出てきます。それはきっと、ふつうの人たちの、変なくせや性格をモデルにしながら描いたもの。だから「ムーミン」はレッキとした人間ドラマなのです。
 でも、原作の本と違って、まんがの方は、新聞の日曜版に描かれていたせいか、それでもやや癒し系。ほのぼのしていて、休日に読むにはぴったりです。

【作品データ】

MUUMIPEIKKO
Written and Illustlated by Tove and Lars Jansson
日本語版:筑摩書房から発売中

 


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