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今月のレビュー作品
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タイトル:HEAVY LIQUID
映画用語で「フィルム・ノワール(Film Noir)」というと、低予算ながらも照明やモノローグを効果的に使うことで、重く退廃した雰囲気を醸し出した犯罪映画のことを指すのだそうです。もともと「マルタの鷹」や「深夜の告白」に代表されるような、1940年代から50年代にかけて製作された映画を指したようですが、最近ではSFの「ブレードランナー」や邦画の「ピストル・オペラ」なんかもフィルム・ノワールと呼ぶ場合があるようです。 闇の世界では法外な高価格で取引される謎の物質、ヘビー・リキッド。室温では黒く粘り気のある軟金属だが、加熱することで液化し麻薬としても使われる。その成分や生産地などは一切不明。物語はこのお宝を強奪しながらも相棒に死なれ、一人残された主人公のS(エス)が、リキッドを買い手のもとへ届けるためにパレードで賑わう冬のマンハッタンへと繰り出すところから始まります。買い手はチャイナタウンで画廊を経営するかたわら貴重な美術品を収集するコレクターで、ヘビー・リキッドを麻薬としてではなく彫像の原料として求めたのでした。希少価値の金属で作る最高の芸術品、そしてその製作者となるべき芸術家は現在消息不明。Sは、コレクターから新たにこの芸術家ロダン・エスペレラの捜索という仕事を依頼されます。そして、ロダンの名はSにとっては5年ぶりに聞く、苦い思い出でもありました…。 自身もリキッド中毒者であるSが、リキッドでラリりながらそのスジのお兄さん&お嬢さんの追跡をかわしつつ、ロダンと再会するクライマックスまでの筋はいたって簡単だし、読後に深く何かを訴えてくるテーマがあるわけでもない。近未来という設定にしても主人公は自前の足で逃げ回るというアナクロさだし、ところどころに登場するギミックもオモチャの延長なだけなので、そっち方面のマニアには物足りないでしょう。じゃあこの作品のウリって何?と言われれば、「雰囲気」。冒頭でアフリカ生まれのタクシー運転手がこぼす冬の厳しさ、湯気や香りが漂ってきそうなチャイナタウンの屋台街、若者でごったがえすクラブ、パリのトタン屋根を打ち付ける雨のにおい。ストーリーを追うよりも街の生臭いまでの空気が伝わってくる、この雰囲気は他にはないものでしょう。そして、めまぐるしい追跡劇の中でのフラッシュバックがいいアクセントになっている。若さにまかせて無軌道だったが楽しかった過去の日々。 さて、フィルム・ノワールにはファム・ファタールという美貌の悪女が登場して、それが退廃的な雰囲気に一役買っているのだが、Heavy Liquidに登場する女たちはどいつもこいつも一筋縄ではいかない。男を集団で手篭めにする少女ギャングや多関節ロボットを操る6歳児、元恋人を再会したいの一番にグーで殴り飛ばすヒロインなど、その元気さがムード作りを台無しにしている点は否めない。主人公のSが凡庸に見えてしまうのはご愛嬌。 作者のPaul Popeは5年間講談社で勤務したこともあり、その間に漫画(アニメ調のMANGAに非ず)の影響を強く受けたとのこと。代表作はインディーズコミックの「THB」ですが、最近はMarvel Comicsの「Tangled Web」や現在発売中のDC Comicsの「100%」など、比較的入手しやすいタイトルを描いていてくれるのがファンとしては嬉しいところ。 【作品データ】 Writer, Artist: Paul Pope
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過去のレビュー作品
'02.06.29 |
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