今月のレビュー作品

THE AMAZING SPIDER-MAN: THE SAGA OF ALIEN COSTUME/阿部 静

BLADE II  (「TOMB OF DRACURA」45〜53号)/ロヒキア

レビューコーナーでは皆さんのお便りをお待ちしています!

 

タイトル:THE AMAZING SPIDER-MAN: THE SAGA OF ALIEN COSTUME
推薦者:阿部 静



 スパイダーマンは「コスチュームの洗濯と繕い物を自分でする」という点でたいへん親近感のわくヒーローです。他のヒーローも陰では似たようなことをしているのかもしれなすのですが、少なくとも作中で実際に主人公がコスチュームの洗濯や裁縫をする描写があるマンガはあまり見かけません。メイおばさんの目を盗んで洗濯機を回し、ご近所に見つからないようにブラインドをしめきった室内に干したり、針と糸を片手に指を血だらけにしながら戦いで敗れた箇所を夜なべして繕ったりと、いち男子高校生がお手製のコスチュームを維持するその陰には、思わず涙を誘う努力の数々があります。とても映画のご立派なコスチュームからは想像もできません。

 さて、そんなスパイダーマンのコスチュームが、一時期だけ真っ黒にモデルチェンジしたことがあるのですがご存知でしょうか。謎の敵ビヨンダーが善悪問わず大量のキャラを謎の異世界「バトルワールド」に召還しバトルロワイヤルを繰り広げさせるという、今や(いろんな意味で)伝説となったMARVEL SUPERHEROES: SECRET WARS (1984) というマキシシリーズの中のことなのですが、我らがスパイディの赤と青のおなじみのコスチュームは激しい戦闘でボロボロになるわ、自慢のウェブシューターは刀狩りのような理由で召し上げられるわ、なんだか自分とかぶる新キャラ(二代目スパイダーウーマン)は登場するわで、黒く丸い謎の物体に思わず手を伸ばしたくもなる状態でした。そんな彼の気持ちに反応するかのように、黒い物体はたちまち彼の体を覆い、新しいコスチュームになるのでした。

 こうしてスパイディは、初登場のAMAZING FANTASY #15 (1962) から何度も壁に叩きつけたりゴミ箱に投げ入れたりしながらも付き合ってきた糟糠の妻のような赤青のコスチュームをアッサリと捨て、ブラック・コスチュームに乗り換えたわけですが、それにはいちおう理由があります。この黒いコスチュームはまるで生きているかのようにスパイダーマンの思考に反応し、着脱不要、伸縮自在、自己再生可能、おまけにウェブシューター内蔵と至れり尽くせりの親切設計。もう食事のたびにマスクをいちいち取らなくてもいいし、暑い夏にムレたりもしない。何よりやっと洗濯や裁縫から解放される!とあっては無理もないでしょう。

 前置きが長くなりましたが、今回紹介するTPBはこのSECRET WARS直後の話で、レギュラーシリーズでのブラックコスチューム初お披露目となるAMAZING SPIDER-MAN #252 (1984) からを収録しています。地球に戻ってからしばらくは進学問題や女性問題やザコ敵と格闘する相変わらずの日々を送っていたのですが、最初のうちは便利に見えた新しいコスチュームは、次第に持ち主の意思とは関係なく勝手な行動をとるようになります。不安を抱いたスパイダーマンは、ファンタスティック・フォー(FF)のミスター・ファンタスティックこと世界最高の科学者リード・リチャーズ博士のもとを訪れます。博士の答えは明快でした。「このコスチュームは高度に進化した共生体(symbiote)だ。つまり生きている!」って見ればわかるんですけど。

 残念ながら、スパイダーマンとブラック・コスチュームは新一とミギー(@寄生獣)のような関係にはなれませんでした。自分のコスチュームが異世界の生物=エイリアンだと遅まきながら気づいたスパイディは、気持ち悪がって離れようとします。FFお得意のスゴい科学でなんとかブラック・コスチュームをひっぺがし捕獲することに成功しますが、今度はスパイダーマンがパンツ一丁になってしまい、やはりFFのヒューマン・トーチことジョニー・ストームの親切な計らいで昔のFFのコスチュームを貸し出してもらいます。マスクをスーパーの紙袋で代用するなど、さすがはスパイディに妙なライバル意識を持つトーチらしい意地の悪さなのですが、どうせならあの不安定分子構造(unstable molecules;伸縮自在のFFのコスチュームに使用されているスゴい科学)を使って一着新調してやれよ、とも思うものですが。

 というわけで、エイリアン・コスチュームの登場はわずか7号で終わってしまったのですが、デザインは気に入っていたのかスパイダーマンは黒いコスチューム(お手製)を着続けます(皮肉なもので、フルカラーのコミックでのスパイディが黒い間、白黒の新聞連載のスパイディは赤と青のコスチュームを継続していたそうです)。
 その後エイリアン・コスチュームはどうなったかというと、FFの管理を逃れ愛しいスパイディのもとに戻ろうとするも教会の鐘で撃退され(WEB OF SPIDER-MAN #1)、デウォルフ警部(スパイディの協力者であった女刑事)の殺人事件で、スパイディのせいで勇み足記事を書き、マスコミから追放された(SPECUTACLER SPIDER-MAN #107-110;THE DEATH OF JEAN DEWOLFF TPに収録)元記者のエディー・ブロックと出会い、ここに「スパイダーマン憎し」の硬い絆で結ばれた最悪の共生怪物「ヴェノム」が誕生します。そして「ヴェノムと同じ黒いコスチュームなんてヤメテ」という新妻メリージェーンの一言で、スパイダーマンはようやく元の赤と青のコスチュームに戻るのでした(AMAZING SPIDER-MAN #300;SPIDER-MAN VS. VENOM TPに収録)。

【作品データ】

出版社:MARVEL COMICS
出版年:1988年4月
ISBN:0-87135-396-2
著者:Roger Stern & Rick Leonardi, et al.
収録作品: THE AMAZING SPIDER-MAN #252-260 (1984)

 

過去のレビュー作品

'02.05.3
SPIDER-MAN: THE DEATH OF GWEN STACY

'02.04.26
Amazing Fantasy #16〜18

'02.04.12
ELFQUEST

'02.03.22
Just Imagine

'02.03.8
THE POWER OF IRON MAN

'02.02.28
Batman: No Man's Land

'02.02.08
Breakfast After Noon

'02.01.16
Hellboy: Conqueror Worm,BLOODSTONE

2002年のレビュー
2001年以前レビュー


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タイトル:BLADE II  (「TOMB OF DRACURA」45〜53号)
推薦者:ロヒキア
画像がないため、1972年のTOMB OF DRACULA#49を掲載しています

 このTPBには映画「ブレイド2」のコミカライズが収録されている他、ブレイドが主に活躍した70年代のマーヴルの人気タイトル「トゥーム・オブ・ドラキュラ」45〜53号の"ブライド・オブ・ドラキュラ"編が収められている。

 死を装うことで、Dr.ストレンジを欺いたドラキュラは、ある邪教の黒ミサの儀式に遭遇。そこで生贄とされかけた女を救い、自らの花嫁として迎えることを宣言する。一方、吸血鬼を追うハンター、ブレイドは吸血鬼の身でありながら、自分と同じく吸血事件を追うハンニバル・キングと出会う。そして、事件の背後に母の仇、吸血鬼ディーコン・フロストの存在を感知するだが、二人の執拗な追跡を恐れたフロストは吸血鬼化したブレイドのドッペルゲンガーを刺客として送りこむ。
 また、ドラキュラは美しき妻ドミニの姿に人間の時の記憶や、長い年月の間に失われた愛の感情が、彼を責め悩ましていた。しかしドラキュラを追い、クインシー・ハーカー、レイチェル・ヴァン・ヘルシング、フランク・ドレイクらはボストンへ集結。祖先の血の繋がり故に、ドラキュラを倒す運命にある三人は再び対決する予感を感じていた。そしてドラキュラの前には、金色に輝く赤い眼の男が立ち塞がる。ドラキュラをも凍りつかせるこの男は何者なのか?ブレイドは自分の分身と仇を倒すことは出来るのか?そして、ドラキュラと、運命の狩人達を待ち受けるものは何であろうか?

 この時期のマーヴルは、世の流行を積極的に取り入れようとしていた時期であり、ドラキュラはオカルトブームの要請に応えて現代に復活し様々なマーヴル・ユニバースの住人と遭遇する事になる。また本書のもう一人の主役ともいうべきブレイドも、ブラックスプロイテーションの申し子ともいうべき存在ではあるが、彼は時代錯誤の存在であるドラキュラという存在に対して、狂暴なる現代の象徴として対峙するのであった。これは、例えばマカロニ・ウエスタンが一時代を築いた後ゆえのアプローチなのであろう。ストーリーは、後にDCの「ザ・ティーン・タイタンズ」で一時代を築くマーブ・ウルフマンが丹念な人物描写を行い、邪悪なれど、永遠の命を持つが故に愛を求めやまない孤独な存在ドラキュラの餓えと、祖先の因縁で、ドラキュラと対決する運命にある人物フランク・ドレイク、レイチェル・ヴァン・ヘルシング、クインシー・ハーカーらの戦いを大河ドラマとして描き、その一方で謀殺されヘドロの海に捨てられた男が復讐鬼となって、自分を殺した連中の顔を奪いにやってくるエピソードや、ある女性の空想世界に迷い込んだドラキュラの不思議な体験を描いたエピソードなど各毎に現代怪談ともいうべき話を盛り込んでいて飽きさせない。
 ブレイドはサイドストーリーの中核として、宿敵ディーコン・フロストが作った自分のドッペル・ゲンガーとの対決や、吸血鬼でありながら同族と戦い続ける、盟友ハンニバル・キングとの出会いが描かれている。更にシルバーサーファー、ソン・オブ・サタンなど、多彩なゲストが物語を彩り、魅力的だ。その登場の仕方、台詞廻しに酔いしれて欲しい。また、アーティストのジーン・コーランは60年代後半から80年代前半にかけて、陰影深く流麗なアートでマーブルやDCでオカルト・ヒーローやクライム・ファイター物のアートを一手に引き受けていた名匠である。現在もダークホースの「バッフィ・ザ・バンパイアスレイヤー」等を手掛けていて健在である。
 最後にこの時期を境に、いわゆるオカルト・ハンターというべき存在が映画やコミック、小説で増えていく傾向にある。映画で例えるなら「エクソシスト」「キャプテン・クロノス 吸血鬼ハンター」「スリラーゲーム 人狼伝説」etc。そしてモンスターより恐ろしい存在としてサイコ殺人鬼の時代が到来するのだ。一番恐ろしいのは人間。そんな現実を反映した後の作品に抵抗を示すように、人間が心の奥で畏怖するものとして存在した、怪奇ロマンの最後の輝きが「トゥーム・オブ・ドラキュラ」という作品なのかもしれない。

【作品データ】

出版社:MARVEL COMICS
"Tomb of Doracula" And Blade Character created by Marv Wolfman and Gene Colan



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