今月のレビュー作品

ELFQUEST/阿部 静

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タイトル:ELFQUEST
推薦者:阿部 静



 二つの月を持つ未開の地に、ある日光り輝く宮殿が天空より墜落する。中からさまよい出た美しき天空人と言葉も解さぬ原住民(=ヒト)とのファーストコンタクトは、異形の姿を恐れたヒトによって天空人が虐殺されるという不幸な結果に終わる。からくもヒトの手を逃れ生き残った天空人のひとりティメインは、同胞を守るために異郷の大地と契りを結ぶ。自らの肉体を犠牲にして...。

 今回の紹介作品は古参のインディペンデント・コミック「ELFQUEST」。1978年の連載開始以来、現在も新作が発表されている長寿のシリーズで、その根強い人気はインターネット黎明期からrec.arts.comics.elfquestという専用ニュースグループが存在するほど(他にrec.arts.comics.*でタイトル単独のニュースグループが存在していたのはX-MENだけ)。古めの作品ながら日本のアニメキャラを思わせるその絵柄は、1970年代に知人から見せてもらった白土三平の「カムイ外伝」の影響が特に強い、と作者のピニ夫妻自ら語っている。昔のラフスケッチなどを見る限りでは木原敏江あたりの少女漫画も少し入ってるかな?という感じもするのだがこれは余談。

 物語は天空人の子孫がエルフと呼ばれる時代、狼に乗って狩りをする東の森のエルフ族ウルフライダーズを中心に進む。敵対する人間の放火によって住む森を焼かれた彼らは、十一代目の少年族長カッターに率いられ、安住の地を求める旅に出る。しかしその小さな冒険は、いつしか南の砂漠の民サンフォークス、西の山岳の民グライダーズ、北の雪原の民ゴーバックスら四つのエルフ族を探し出す旅(elfquest)となり、やがて協力して失われた天空の宮殿を奪回する聖戦へと、どんどんスケールが大きくなっていく。さらにウルフライダーズはその旅の中で、自分たちだけが他のエルフのように永遠に生きることができないという衝撃の事実を知ってしまう。

 重い話はさておき、この世界のエルフ族にはユニークな特徴がいくつかある。男女の間に突然発生する「レコグニション(recognition)」もそのひとつで、これが起きた者同士は『つがい』となって半ば強制的に新しい命を生むことになるのだが、これが困ったことに部族、年齢差、本人の感情をまったく無視して起こるために悲喜こもごものドラマを生む。ウルフライダーズのカッターとサンフォークスの姫リーターという主人公カップルの場合、初めての異部族間レコグニションということもあって困難を極めた。年若いカッターにとって美しいリーターは夢のような初恋なのだが、リーターにとっては年下の野蛮人と契るなど文明人としてのプライドが許さない。彼女の拒絶が理解できないカッターは苦悩するし、理性では受け入れられなくても本能では彼に惹かれていくリーターは混乱する。結局、互いの文化を理解しあうことで(というよりカッターの泣き落としにしか見えないのだが)二人は運命に従うのだが、子供が生まれ共に暮らすうちにレコグニションではなく本当の愛で強く結ばれていく。

 実はこのときのリーターの拒絶は、ウルフライダーズの寿命の秘密と大きくかかわっている。有限の命だからこそ親から子へ受け継がれるものがあり、変化に柔軟に対応することができる。それこそ始祖ティメインがわが子に遺した贈り物であり、その直系の子孫であるカッターとウルフライダーズだけが、運命に翻弄されながらも同族をまとめあげるという大役をなし得たのである。

 ELFQUESTは天空人降臨から二万年の歴史を綴った壮大なサーガで、カッターとウルフライダーズの冒険もその一エピソードに過ぎない。この部分だけ読むと剣と魔法のファンタジーに見えるが、実は恒星間航行や時間漂流、遺伝子操作などの用語が見え隠れするSFでもある。

 最後に、「まー指輪物語も映画になったことだしファンタジーブームだから次のレビューはELFQUESTにでもしとくかな」と軽い気持ちでいたのに、確認のために再度読み始めたらあまりの面白さに止まらなくなり、締め切りを大幅に過ぎてしまったことをお詫びします。
 

【作品データ】

Writer and Artist: Wendi and Richard Pini
Publisher:WaRP Graphics
公式サイト:http://www.elfquest.com/

 

過去のレビュー作品

'02.03.22
Just Imagine

'02.03.8
THE POWER OF IRON MAN

'02.02.28
Batman: No Man's Land

'02.02.08
Breakfast After Noon

'02.01.16
Hellboy: Conqueror Worm,BLOODSTONE

2002年のレビュー
2001年以前レビュー



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