今月のレビュー作品

Hellboy: Conqueror Worm/高木 亮
BLOODSTONE/ロキヒア

レビューコーナーでは皆さんのお便りをお待ちしています!

 

〜ヘルボーイ、あんたかっこよすぎるぜ!〜

タイトル:Hellboy: Conqueror Worm
推薦者:高木 亮

 「Hellboy: Conqueror Worm」は、日本でも漫画家やアニメーターを中心に人気の高いヘルボーイの最新作である。簡単にあらすじを紹介してみよう。

 1939年、ナチスドイツがオーストリアのハント城で、ある極秘実験をおこなっていた。それは"ナチのアインシュタイン"との異名をとる天才科学者エルンスト・オーミンをロケットに乗せて外宇宙へと送り出す、というものだった。しかし、その計画は伝説の英雄ロブスター・ジョンソン率いるアメリカ軍の活躍によって阻止されたかに見えた。
 時は流れ、2000年。BPRD(超常現象捜査局)に所属するヘルボーイは、オーミンを乗せたロケットが再び地球に接近していることを知らされる。ロケットが軌道修正をしながらハント城に向かっていることを突き止めたBPRDは、ヘルボーイと人造人間ロジャーの二人を現場へと派遣することにした。その際、ヘルボーイは上司のトムから、ある物を手渡される。それはロジャーの体内に仕組まれた爆弾を起爆させるリモコンスイッチだった。人造人間であるロジャーは生きた人間ではなく、ただの道具であり、もし危険な事態が発生した場合には破壊してもよい、というのがBPRD上層部の見解だったのだ。ヘルボーイはそうしたやり方に反発をおぼえるものの、仕方なくスイッチを受け取るしかなかった。
 ヘルボーイとロジャーは、ローラ・カーンシュタインという現地人のガイドとともに、ハント城を目指して険しい雪山を登っていく。ようやくハント城にたどり着いた一行だが、彼らの到着を予期していた敵の奇襲攻撃を受けて、ロジャーは崖下へと墜落し、ヘルボーイは城の一室に監禁されてしまう。実はローラは、ナチスドイツの科学者ヘルマン・フォン・クレンプトの孫娘であり、ヘルボーイたちを罠へとおびき寄せる役割を果たしていたのだった。崖下に落ちたロジャーは、そこで伝説の英雄ロブスター・ジョンソンと出会い、行動をともにすることにする。二人はハント城の秘密研究室へと侵入し、そこの電力を遮断して破壊することに成功する。
 一方、囚われたヘルボーイは宿敵クレンプトと再会し、彼が作り出したサイボーグ・ゴリラと戦う羽目になるのだが、なんとかゴリラを倒して脱出する。その後、ヘルボーイはハント城に監禁されていたアメリカ人兵士(実は地球に潜入していたエイリアンなのだが)と出会い、ナチスの真の目的を聞かされる。ナチスは実体を持たない邪悪な超生命体が宇宙空間に漂流していることを感知し、死んだ人間の肉体を媒介として、それを地球に召還しようと目論んでいたのだ。アメリカ人兵士は超生命体に対抗する武器をヘルボーイに与えると、息を引き取っていく。
 やがて、ヘルボーイはロジャーと合流するものの、その時すでにロケットはハント城に到着していた。そして、そのなかから実体を得た超生命体が姿を現した。ヘルボーイは知らなかったが、実はその生命体というのは、異次元に封印された破壊神オグドル・ヤハドの先兵"征服蟲"だった。征服蟲の到来は人類の滅亡を意味し、ひいては破壊神の覚醒と全宇宙の破滅へとつながっていく。ヘルボーイはアメリカ人兵士から渡された武器を用いて、征服蟲に立ち向かうが、クレンプトの介入により肝心の武器を破壊されてしまう。
 万策尽きたかと思われたその時、征服蟲の弱点が電気だということを見抜いたロジャーは、ヘルボーイの制止を振り切って、自らの肉体を囮にして、征服蟲を封じ込めようとする。征服蟲を体内に取り込んだロジャーは、ヘルボーイに自分の肉体を爆破しろと言うのだが、非情になれないヘルボーイはどうしても爆破スイッチを押すことはできない。征服蟲を解放して人類を破滅させるわけにはいかない。しかし、果たしてロジャーを傷つけずに征服蟲を倒す手段はあるのだろうか…?

 ヘルボーイの魅力と言えば、すぐさま作者マイク・ミニョーラのたぐいまれなアートセンスを思い浮かべるが、ここではストーリーとキャラクターに焦点を当ててみたい。
 まずストーリーであるが、ヘルボーイの作品には他のアメコミにはない独特の叙情性が感じられる。作者のミニョーラは世界各国の神話や伝説や民話などに興味を持っているらしく、そのせいもあって、民話を直接的に作品のモチーフとして取り上げることもあれば(「屍」)、昔話に頻出する"しゃべる動物"をストーリーの随所にちりばめることも少なくない。こうした技法により、ヘルボーイの作品そのものがホラーアクションではなく、むしろ奇妙に童話的・寓話的な性格を帯びていると言えよう。スーパーヒーローのアクション重視のアメコミ界においては、こうした作風は異例ではあるが、それゆえにこそ忘れられない異彩を放つというものだろう。
 次にヘルボーイというキャラクターについてであるが、まず第一にヘルボーイは強い。それはなにも肉体的な強さのことだけではなく、精神力の強さにも現れている。本書においても、ヘルボーイは征服蟲という圧倒的な強敵に立ち向かいながらも、決して弱音を吐くようなことはしない。世界の命運を一身に背負いながらも、むしろ気負うことなく堂々と立ち向かっていく。他のアメコミヒーローのように大義名分を必要としたり、自分の正当性をべらべらとしゃべりまくるようなことはしない。彼はただそこにいる。そこに存在することが、一つの主張であり、誇りなのだ。第二にヘルボーイはやさしい。養父ブルームに対する愛情、同僚リズ・シャーマンに対する思いやり、友人エイブラハム・サピエンに対する友情、そして人造人間ロジャーへの深い共感。レイモンド・チャンドラーのハードボイルド小説に「タフでなければ生きていけない。やさしくなければ生きている資格がない」という有名な台詞があるが、ヘルボーイは正にそれを地でいくような男なのである。
 本書はさまざまな角度から楽しむことができる。そのストーリーに現代の民話の面影を見るもよし、ヘルボーイのやさしさとたくましさに憧れるもよし。そして、もちろんミニョーラのアートに酔いしれるもよし。どこをとっても無駄のない、現段階におけるヘルボーイの最高傑作と言えよう。既刊4冊と同様に、日本でも邦訳されることを切に願う。
 

【作品データ】

Story and Art by Mike Mignola
Published by Dark Horse Comics
発売:2001年 ※2002年2月13日に合本が発売予定
関連サイト:http://www.hellboy.com/

 

過去のレビュー作品

2002年のレビュー
2001年以前レビュー

タイトル:BLOODSTONE
推薦者:ロキヒア

 迷走するマーヴル・ユニバースに参入した、新たなるオカルトヒロイン!
 18歳になる少女、エルサ・ブラッドストーンは母と共に、亡き父の遺産と屋敷を引き継ぐ為に、ボストンへ移住した。彼女の父は、高名な冒険家であったらしい。エルサは新しい生活を楽しんでいたが、夢の中で魔物と戦う自分の姿を見るようになった。
 ある日、屋敷にある数々の不思議なコレクションに魅せられたエルサは、父の書斎の肖像画の裏に隠し扉があるのに気付き、その部屋へ侵入した。そこにはアダムと名乗る縫合跡をつけた大男に遭遇する。そしてアダムから、自分の父はモンスターハンターだったと聞かされ父の形見であるアクセサリーを渡される。そのアクセサリーには血のような紅の宝石がはめ込まれていた。それを首にかけたエルサは体内に不思議な力がみなぎるのを感じる。だがその瞬間、エルサのそばにあった古いランプが反応し、エルサはランプの力で別の世界に吸い込まれてしまう。エルサの眼前に広がるのは霧深い中世の世界と闇の帝王ドラキュラの姿であった。エルサの運命はいかに・・・!

 DCの「STAR」に導入が似てなくもないが、70年代に活躍し近年ではシルバーエイジ以前にモンスター・ハンターズのメンバーとして活躍した「ブラッドストーン」の正当な後継者であるという点ではマーヴルではめずらしく初代と直結したオリジンを持つ2代目である。混迷するユニバースの中で、彼女の占めるウエィトは意外にも大きいのではないだろうか?「ハムナプトラ」「トゥームストーン」などのトレンドな要素も取り入れつつ、今後の活躍が期待される新キャラクターである。(ナイトシェード、ウイッチーズにも期待!)

【作品データ】

Publisher: Marvel Comics (2001年)
Writer: Dan Abnett & Andy Lanning
Artist: Michael Lopez, Scott Hanna, Color Dojo



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