今月のレビュー作品

Iron Man: Mask in the Iron Man   推薦者:高木 亮

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タイトル:Iron Man: Mask in the Iron Man
推薦者:高木 亮

 “付喪神”あるいは“器物の怪”と呼ばれる妖怪がいる。人間が使い込んで百年たった器物には精霊が宿り、妖怪化するのだという。人気作家の夢枕獏の「陰陽師」や京極夏彦の「百器徒然袋−雨」といった伝奇小説にも登場しているので、ご存じの方も多いだろう。その起源は古く、江戸時代に描かれた鳥山石燕の「百鬼徒然袋」だけでなく、室町時代に描かれた「付喪神記」などで、彼らの元気な姿を見ることができる。そして、現代社会でも付喪神たちは形を変えて生き残っている。一見モノのように見せかけながら、疑似感情という“心”をプログラムされたAI搭載玩具として。そう、AIBOに代表されるようなヴァーチャル・ペットたちは、さながら人工的に命をふきこまれた21世紀版付喪神と呼べるのではあるまいか。今回紹介する「Iron Man: Mask in the Iron Man」も、そうした21世紀版付喪神が登場する話である。

 最先端企業“スターク・ソリューション”の社長トニー・スタークは、ビジネス社会の実力者であるだけでなく、正義の戦士アイアンマンとしての顔も持っている。金持ちのプレイボーイとして周囲からは羨望のまなざしで見られることの多いスタークだが、その内面には人一倍傷つきやすい弱さと脆さが隠されていた。そうした性格のおかげで、“フジカワ・エンタープライズ”の令嬢フジカワ・ルミコとの恋愛もうまくいかない日々が続いていた。そんななか、ミレニアムの到来を目前に控えた1999年12月31日、スタークはアイアンマン抹殺のために現れた宿敵ウィップラッシュと戦うことになる。いつものようにアイアン・アーマーを身につけたスタークはウィップラッシュとの戦闘中、落雷に巻き込まれて、地上に墜落してしまう。その際に意識を失ったスタークは奇妙な疑似現実感覚を体験する。やがて、意識を取り戻したスタークは、自分のアーマーに異常がおきていることを発見する。なんと、しばらく前にアーマー内部のコンピューターにダウンロードしたAIが、落雷時のショックで目覚め、驚異的なスピードで独自に進化しはじめていたのだ。すぐにアーマー全体を支配できるようになったAIは、スタークの懸念をよそに、自分とスタークは“人間と機械の完璧な一体化”だと主張しはじめる。しかし、その後、ウィップラッシュと再び出会った時に、アーマーはスタークの制止の言葉に耳を貸さず、ウィップラッシュを情け容赦なく打ちのめし、遂には死に至らしめてしまう。しかも、スタークに殺人行為を咎められたアーマーは、今度は攻撃の矛先をスタークに向け始める。必死の抵抗もむなしく、スタークはビキニ諸島にある無人島へと連れ去られ、アーマーと一対一の死闘を繰り広げる羽目になる。人間対機械。心を持つ者対持たざる者。最後に勝利を手に入れるのは果たしてどちらなのか…?

 「自我意識を持った機械が人間に反乱をおこす」というモチーフは、SF世界の古典的なテーマの一つであり、この「Mask in the Iron Man」もその系譜につらなるものと言える。ストーリーだけを見るならば、やや陳腐な結末となっており、人間対機械というテーマを深く掘り下げているとは言いがたい。しかし、それを補ってあまりあるのが、Sean Chenによる丁寧に描き込まれたアートと、Steve Oliffによる美麗なカラーリングである。黄金の騎士アイアンマンの光り輝くボディを堪能したい方はぜひ本書を手にとっていただきたい。

【作品データ】
Writer: Joe Quesada
Artist: Sean Chen & Alitha Martinez
Publisher: Marvel Comics
発売:2000年 合本が発売中。
関連サイト:http://www.marvel.com/
      http://www.geocities.com/Area51/Meteor/5627/im_index.htm

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