〜記憶のなかに埋もれた悲劇のヒーロー〜
タイトル:セントリー
推薦者:高木 亮
フィリップ・K・ディックという有名なSF作家がいる。映画「ブレードランナー」や「トータル・リコール」などの原作者であり、SF界ではカルト的な人気を誇る作家である。ディックの小説の多くは、今まで現実だと思っていたものが徐々に蝕まれて崩壊していく様を描いており、現実と虚構(あるいは主観と客観、本物と偽物)の間にある境界線がいかにあいまいなものであるかを読者に教えてくれる。その作品が持つ独特のトリップ感覚に魅せられた人も多いことだろう。
今回紹介する「セントリー」も、物語の導入部分は非常にディック的である。主人公はボブ・レイノルズという中年男性。郊外の一軒家に妻と愛犬とともに暮らしているが、彼は自分でもどうしようもない妄想に苦しんでいた。ボブは、かつて自分はセントリーという名のヒーローであり、破壊神ボイドから世界を守っていたのだ、という考えを頭から振り払うことができずにいたのだった。しかし、妻をはじめ周囲の人間は誰一人としてボブの言うことを信用しようとはしない。自分が正しいことを信じ続けるボブは、失われた過去−昔の自分自身−を取り戻すために一人旅立つ。ボブはファンタスティック・フォーの一人リード・リチャーズに会いに行くが、かつては親友だったはずのリードも、ボブの存在すら覚えてはいなかった。やがて、真実を求め続けるボブの行動に刺激されたかのように、人々は少しずつ記憶を取り戻していく。かつてセントリーという名の素晴らしきヒーローがいたことを。けれど、ボブ自身にもどうしても思い出せないことがあった。なぜセントリーは人々の記憶から消え去ってしまったのか、そして宿敵ボイドの正体とは? 全ての謎が明らかになる時、そこには大いなる悲劇が待ち受けていた…。
「セントリー」の物語は全10冊の構成となっていて、最初に「the Sentry #1-5」というミニシリーズがあり、「the Sentry/ Fantastic
Four」「the Sentry/ Hulk」「the Sentry/ Spider-Man」「the Sentry/ X-Men」という4冊のワンショットを経て、「the
Sentry vs. the Void」という完結編でクライマックスを迎える(現在のところ、合本は発売されていない)。かつて「インヒューマンズ」を手がけた人気コンビ、ポール・ジェンキンスとジェイ・リーが再びタッグを組んで送る力作であり、「インヒューマンズ」に魅せられた方は是非読んでいただきたい作品である。
【作品データ】
Writer: Paul Jenkins
Artist: Jae Lee
Publisher: Marvel Comics/ Marvel Knights
発売:2000〜2001年
受賞:(特になし)
関連サイト:http://www.marvel.com/
タイトル:SUPERMAN FOR ALL SEASONS #1-4
推薦者:junya666
少なくとも、私はスーパーマンがあまり好きではなかった…コミックを読む前は。ハデなコスチュームに偽善的な正義感。少なくとも読む前はそう思っていた… でも、その意識を変えてくれたのは2つのタイトルであった。1つはすでに小プロから発売されているアレックス・ロスの“SUPERMAN:PEACE
ON EARTH”。もう1つはライター、ジェフ・ロエブとアーティスト、ティム・セールのコンビ(代表作:BATMAN:LONG HALOWEEN、BATMAN:DARK
VICTRY)が放った"SUPERMAN FOR ALL SEASONS(全4話)"だった… おかげで現在、レギュラータイトル4本、ゲストしたタイトルなど毎月購入に至っている。DCコミックスの思い通りに踊らされている。今さらながら、このスーパーマンというキャラクターの歴史からくる深さ、他者へのやさしさ、そして強さ、あらゆる意味で読みながら、すごいと感じさせられる。
主人公クラーク・ケント(クリプトン人での名はカル・エル)は故郷クリプトン星が崩壊する際、父ジョーエルの作った小型ロケットに乗って地球に着き、心優しきケント夫妻に育てられ、幸せな時代を過ごす。そして、青年となったクラークは自分が普通の人間と違うこ事に気付き、自らの生い立ちを両親から知らされる。自分の出生を知り、彼はその力の使い道を正しきことに使うように誓い、メトロポリスでスーパーマンとして活躍するというのは、多くの人が知っている事であろう。
このコミック、"SUPERMAN FOR ALL SEASONS"は大変分かりやすく、いい話である。物語の流れが大変ゆっくりと進んで行くのもいい。
物語は3人のL .L.を絡ませて展開する。一人は永遠の宿敵先頃、大統領になったレックス・ルーサー。同僚にして、後に妻になるロイス・レーン。そして初恋の人ラナ・ラング。
物語は春、夏、秋、冬と構成されている。それぞれのナンバリングも季節を思わせる物語で流れていきます。
春編(#1)ではクラークが能力に目覚め、メトロポリスに超人スーパーマンが現われるまでの話である。その中では自分の存在の大きさと普通の青年の心の悩みを描いている。特にケント夫妻の愛情の大きさは読んでいて、大変胸を打つ。どんなにすごい超人であろうが、彼等にとっては、たった一人の息子である。クラークが自らの力に恐れる時も父ジョナサンは優しく包容する。ケント夫妻というやさしさが(強い家族)あるからこそ、スーパーマンはスーパーマンであるのだ。そして、メトロポリスへ旅立つ。
#2(夏)ではクラークがスーパーマンとしてメトロポリスでの活躍と私生活を描いている。
#4は当然、冬。大きな心の傷を負ったクラークはスモールヴィルへ心を癒しに戻る…凍てつく厳しい冬。そして冬の過ぎ去った後には暖かな春が来る。かならず…メトロポリスにも…再び希望を携えて。スーパーマンはかならず。そして、メトロポリスの人々の前に現われて、人々は喜びと希望を込めて、言うだろう。
『鳥だ!飛行機だ!いや…スーパーマンだ!』
【作品データ】
Writer: Jeph Loeb
Artist: Tim Sale
Publisher: DC Comics
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