〜スーパーヒーローは存在ではない。職業である
タイトル:TOP TEN
推薦者:高木亮
コミックに出てくるヒーローのように、自分もスーパーパワーが欲しい。そう思ったことはありませんか? 空を飛べる力、体を伸縮させる力、瞬間移動できる力…。「ウォッチメン」では“超人がたった一人だけ存在している世界”を描いていましたが、この「トップ・テン」は“あらゆる人間がスーパーパワーを持っている世界”が舞台です。ここではもはや超人という概念は意味をなしません。パワードスーツに身を包んだ主婦がいるかと思えば、外宇宙からやって来た連続殺人鬼のエイリアンもいる。知能を持った犬もいれば、街角のバーでは神々が酒を飲んで酔っ払っている。要するに“何でもあり”の世界です。
そんな世界においても(いや、そんな世界だからこそ)、犯罪は発生し、それを取り締まる警察機関も存在します。トップ・テンというのは、超巨大都市ネオポリスの第十分署に勤務する警官たちの俗称であり、その彼らの活動をテレビの連続刑事ドラマ風に仕上げたのが本作品です。人気テレビ番組の『ER』のように複数の事件が同時進行しているため、ストーリーをかいつまんで説明するのは困難なのですが、次々に繰り出される奇想天外なアイデアと個性的なキャラクターの数々は、天才脚本家アラン・ムーアの面
目躍如といったところ。また、この複雑怪奇な世界を見事にビジュアル化させたジーン・ハの作画能力もお見事。1コマ1コマを丁寧に描きあげ、コマの隅にいる通
りすがりのキャラクターでさえもオリジナリティを感じさせます。さらに、正義と悪との相克をただ単に観念的に描くのではなく、極めて日常的な視点から描くことによって作品に奇妙なリアリティをかもし出しています。
アメコミにヒーローチーム物は数あれど、刑事物でかつ連続テレビドラマ風に仕上げたものは他に例を見ないでしょう。テレビドラマで言えば、まだ第一シーズンの途中。今から見始めても(読み始めても)遅くはありません。
【作品データ】
発売:1999年〜現在も刊行中 ※#1〜8を収録したハードカバー版が近日発売予定
受賞:2000年度アイズナー賞(Best New Series部門)
関連ウェブ:http://www.wildstorm.com/
http://www.alanmoorefansite.com/
Written by Alan Moore
Illustrated by Gene Ha & Zander Cannon
DC Comics / America's Best Comics
*高木亮さんのレビューは連載です。随時更新されますのでご期待ください。
タイトル:SUPERMAN PEACE ON EARTH
推薦者:toshibo
「SUPERMAN PEACE ON
EARTH」 は、ヒーロー故の心の葛藤を描いた作品であると同時に僕ら人間自身への問いかけを行っている作品である。私自身翻訳を熱望していた作品であったこともあり、是非紹介したいと思う。
もし、現実にスーパーマンが存在しているとしたら、地球は平和になるだろうか?犯罪はなくなるだろうか?むろん答えはノーである。どんなに"彼"がすごくても一人の力では限界があるのだから。
クラーク(=スーパーマン)は、クリスマスにホームレスの人たちを取材し、自分の力を世界の飢餓に役立てるため行動を起こす。"彼"は議会の承認を受け、提供された余剰穀物を、世界の恵まれない国へ一人配り始める。しかし、人々の"彼"への対応は、感謝だけではなかった。他人を押しのけてでも貰おうとする人々、恐怖で施しを受け入れられない人々、独裁者が穀物を掌握しようとする国、"彼"への問答無用の攻撃を行う国など。僕の心に響いたのは一人の子供の発した言葉であった。「明日も来てくれるの?」のと。飢餓を撲滅するためには数日分の食料ではどうにもできないのである。果
たして"彼"の行動は正しかったのだろうか?その答えは幼き頃の養父からの教えにあった。真の平和が訪れるためには、全ての人に生きるためのチャンスを平等に与えることが大切なことを。
ヒーローとは全ての人を助けることではなく、人々に生きる勇気を与えてくれる存在なのだと、この作品を通
じて実感したのである。決して"彼"の活躍話ではなく、スーパーマンを通して真の平和について考えてみる、そんな作品である。
アレックス・ロスのアートがこの作品に深みを出しているのは言うまでもない。
【作品データ】
Written by PAUL DINI
Illustrated by ALEX ROSS
DC Comics
邦訳版:小学館プロダクション「スーパーマン・ピース・オン・アース」
タイトル:Castle Waiting
推薦者:匿名希望
白雪姫もシンデレラも、およそお姫様が主人公の童話は「そして二人は末永く幸せに暮らしました」で終わる。すべての努力と苦労は結婚というゴールを迎えることで報われるという甘い幻想と、お姫様は独りでは幸せにはなれないのだという強迫観念を、おとぎ話は世の女の子たちに植え付けてきた。だからおとぎの世界では、お姫様は夫に暴力をふるわれることはないし、夫の子ではない子を妊娠することもないし、自分の城から逃げ出すこともない。
それらをすべてやってしまった“おとぎ話”が「Castle Waiting」である。
顔をアザで腫れ上がらせたうら若い貴婦人レディ・ジェインは、ある嵐の晩に人目を避けるようにして城を出る。お供もつけず、次第に目立ってくるお腹を抱え、父親の遺した古い地図だけを頼りにした一人旅の目的地は、人里離れた辺鄙な古城だった。腹ボテの姫君が輿ではなく馬に乗って一人旅をするという時点で、既におとぎ話のヒロインとしては失格であるのだが、続く展開はさらにスゴい。無事たどり着いた古城「キャッスル・ウェイティング」で彼女は男子を出産するのだが、その子は彼女の夫の子ではなかった。そればかりか人間の子ですらなかったのだ。
このようなあらすじにも関わらず、「Castle Waiting」はユーモアに満ちた心温まる物語である。その大きな理由は、登場人物の視点の暖かさにある。事情を一切詮索せず、黙ってジェインを受け入れる城の住人たち。多くは安らかな死を求めて来訪するというこの古城で、新しい生命が誕生したことを素直に喜び祝福する彼らは、みな素朴で心優しい。だが何よりこの物語を明るくしているのは、主人公のジェインの聡明さと逞しさだろう。旅の道中で馬を盗まれれば双子の盗賊ドワーフを味方につけて平和的に取り返し、城に着いてからは臨月にも関わらず「何か役に立つことをしたい」とあちこち歩き回っては城の住民をやきもきさせる。自力で人生の軌道修正ができる彼女には、もはや白馬の騎士の助けは必要ない。
女の人生のゴールは結婚であるとされていた一昔前なら、ステキな王子様のキスをひたすら待つ白雪姫やシンデレラは女の子のもっとも身近な模範であった。そんな予定調和の軌道から外れ、シングルマザーが珍しくなくなった現代において、「Castle
Waiting」は新しい人生の模範となるのかもしれない。
【作品データ】
Written and illustrated by Linda Medley
Cartoon Books
タイトル:Mister Miracle
推薦者:ロキヒア
魔の星アポカリプスから脱出した男スコット・フリーは地球において世界最高の脱出王Mr.ミラクルの名を受け継ぎ、ダークシードの手先の様々な罠から脱出を続けるのだ!
って、スタントマン・ブームに乗っかって出版されたんだけど、巨匠カービィーのポップなアートもさることながら、自由というものをキャラクターの行動において語ろうという意欲が見えて面
白い。
毎回、脱出シーンが目玉だけど、カービィーの描くゴッツイ拘束具とか、強い奥さんヴァーダとかマーヴル時代とは違った魅力に溢れています。
【作品データ】
Written and illustrated by Jack Kirby
DC COMICS
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