メリーっクリスマス! えっ、誰だコイツ?じゃと、何じゃ冷たいのう、もう忘れられてるのか……。わしじゃよ。うぉっちゃーじゃよ。若いもんは冷たいのう。もう年の瀬も押し詰まっておるから、はやいとこ仕事だの掃除を片づけて、暖かい部屋でぱーちーをしたりとか、こたつでTVを見たりとかしたいっていうことなんじゃろ。わしのことなんか、どーでもいいに決まっとる。何じゃい、フンだ。……え?いじける前に質問を片づけろじゃと?……そうじゃな……ずっとこたえを待たせておるものなあ……そりゃ、忘れられても……しかたないやな……わ、わしが悪かった……ゴホゴホ……
 
 久しぶりだから照れくさくて、ちょっと寸劇をかましてみたが、ま、てけとーにここらでいいとしてお便りじゃ。

 「フランスの“ヘビーメタル”や“メタル・ユルラン”について、あまりよく知らないので教えてください。この2つは、同じコミックなんですか?」(服部広毅 さん)

 「バンドデシネとアメコミの違いはなんですか?」(Co.ek さん)
 
 うー、みんな難しいことを言うんじゃのう……
 フランス語で、コミックを「バンドデシネ」、略して"BD"(ベーデー)と言う。Bande Dessineeは「デッサンの描かれた帯」という意味じゃ。なぜ「帯」なのかということじゃが、英語のComic Stripという単語がよく当てられているところを見ると、連続コママンガ、そして映画のフィルムからの連想じゃないかのう。 また、バンドデシネには9th Art(9番目の芸術)という別称もある。(1)文学(2)音楽(3)絵画(4)演劇(5)建築(6)彫刻(7)舞踏(8)映画に続く芸術表現とされておるのじゃよ。どうじゃ、高尚じゃろ。ここからしても、日本のマンガやアメコミと違う認識を得ているメディアということがわかるじゃろう。
 このページを見ているようなマンガ読者のみんなには、“バンドデシネ”といえばフランスの、なんだか地味で、でも描きこみはすごくて、いい装丁の高価な本、という認識があると思うが、実際には「フランス語で描かれたコミック」がバンドデシネなわけじゃからして、世界的には、“バンドデシネ”といえばフランス語で出版されているベルギーコミックの方が有名だったりするのじゃよ。

 バンドデシネの歴史は古く、はじまりは1830年からとされておる。フランスの新聞の風刺マンガからのスタートじゃ(現在バンドデシネというジャンルを語る際には、こうした風刺コママンガは除外されておるがの……)。 1890年代末、フランスでははじめてのコミックキャラクターと言われる「LA FAMILLE FENOUILLARD」が新聞連載マンガとして誕生。とんで1930年にはベルギーで、ディズニーの台頭に対抗しようとしたデュプイ社が、ベルボーイのスピローを主人公にしたバンドデシネ「スピロー」を発行して大ヒットさせた。ついで、同じくベルギーで「タンタン」が発売され、ベルギーだけでなくフランス語圏でバンドデシネは大変な人気を得たわけなんじゃ。1960年代にはフランスで「アスタリスク」という、ローマ時代を舞台にしたコミックが発売されて大ヒット、これも国民的人気コミックとなっておる。ととてつもない駆け足のブリーフ・ヒストリーだったがカンベンしてくれい、なんせいくらわしでも、どうにもフランス語が苦手なんじゃ。こういう歴史は例えば、ベルギーのバンドデシネセンターCentre Belge de la Bande Dessineeや、フランスの国立バンドデシネセンターCentre National de la Bande Dessineeなんかのページに紹介されておる。
 んでもってじゃ、ここまでの時代の作品は全部子供向けで、週間ペースで出されていることがほとんどだったんじゃ。今日の“バンドデシネ”という言葉で連想するような、じっくり描きこまれた大人向けの芸術作品というものが生まれてくるのはごく最近のことなんじゃ。

 バンドデシネの今のこの状況を創り出したのは、フランスの前衛的コミック誌「メタル・ユルラン」の創刊によるところが大きい。1975年、それまでの子供向け商業誌ばかりという風潮に背を向け、新しい時代のバンドデシネを作ろうというコンセプトで、ユマノイド・アソシエというマンガ家集団がたちあげた新雑誌が「メタル・ユルラン」じゃ。ユマノイド・アソシエのメンバーには、メビウス(ジャン・ジロー)、フィリップ・ドリュイエジャン=ピエール・ディオーネ、バーナード・ファルカシュといった作家たちがいた。特に、メインのマンガ家として活躍したメビウスの影響が大きく、コミックは次第に芸術作品として認められていくことになる。そして量産されず、クオリティが追求され、知的な大人のためにしばしば哲学的内容を含んで描かれる現在のフランスの“バンドデシネ”スタイルが完成するわけなのじゃ。
 このフランス製バンドデシネは世界中のコミックシーンに大きな影響を与えた。世界中のどこの国でも、コミックはやはり子供むけで、量産される商業誌での掲載だったから、衝撃は大きかったわけじゃな。
 1977年には「メタル・ユルラン」のアメリカ版「ヘビーメタル」誌が出版されることになった。そもそもはな、サブカル系のユーモア雑誌「ナショナル・ランプーン」のフランス語版を出すためにパリへ渡っていたレン・モーゲルが「メタル・ユルラン」を見て興味を持ち、アメリカでの出版権を得たのがはじまりなんじゃ。ちなみにモーゲルはのちに「ナショナル・ランプーンズ・アニマルハウス」などの映画プロデューサーにもなったところから、「ヘビーメタル」もこの後2作の映画が作られることになるのじゃよ。もう一つちなみに、2作目の「ヘビーメタル:FAKK2」は日本語版DVDが今年の3月にリリースされてるのじゃ。

 ともあれ、「メタル・ユルラン」より大規模なマーケットを持つ「ヘビーメタル」によって、バンドデシネは世界中に知られていくことになる。「ヘビーメタル」は、当初フランスの作家を英語版で紹介する形だったが、そのクオリティの高さにひきつけられたマンガ家たちが集まりはじめたこともあり、しだいにアメリカやその他の国出身のマンガ家の作品も掲載されはじめた。リチャード・コーベンフランク・フラゼッタサイモン・ビズレーなどの超絶技巧派イラストレーターたちのコミックが掲載されていく。また、アメリカならではのロックやサイケなどのサブカル文化も取り入れた「メタル・ユルラン」とはまた違うスタイルが生みだされ、アート的なコミック雑誌の最高峰を極めたのじゃ。 だが80年代後半にはその勢いも失速しはじめ、月間で出版されていた雑誌も隔月へと落ちこんでいく。その後、1991年に自費出版の「ミュータント・タートルズ」の大ヒットでひと山当てたケビン・イーストマンが「ヘビー・メタル」誌を買収してからも、隔月で雑誌が出されておる。現在はファンタジー・グラフィック・アートの雑誌としての色合いが強く、創刊時の先鋭的バンドデシネの雰囲気はもうないが、やはりそれでも一つのジャンルを築いている雑誌として認知されておるんじゃよ。
 さっき映画の話が出たが、「ヘビーメタル」の世界観をベースにしたゲームのリリースもあった。2000年には2作目の映画をベースにした「ヘビーメタル:F.A.K.K.2」(P&A GAMES)2001年には「ヘビーメタル:ジオマトリックス」(カプコン)が日本リリースされておる。どっちもそのオフィシャルサイトが残っておる。こうした日本語サイトを訪れれば、なんとなく“ヘビーメタルらしさ”が見えてくると思うので、よくわからんという人は行ってみたらどうじゃろか。

 一方、本家「メタル・ユルラン」も同じく80年代に失速して1987年にとうとう廃刊しておる。だが2002年に入ると、ユマノイド・アソシエのアメリカ拠点であるヒューマノイド・パブリッシングから「メタル・ユルラン」がSFコミック雑誌として再び創刊されたのじゃ。フランスとアメリカのマンガ家を取りまぜて作品掲載するところは、往年の「ヘビーメタル」誌に近いところがある。じゃが、現在の「ヘビーメタル」に比べると、新生「メタル・ユルラン」はグラフィックへのこだわりよりもコミックの面白さに比重を置いているように見受けられるのう。かたわらヒューマノイド・パブリッシングは、もちろん、メビウス、エンキ・ビラル、ヒネメスなんかの“バンドデシネの巨匠”の英語版も出版して、バンドデシネ文化を護っておるがな。
 
 どうじゃ、わかったかな? あ〜〜、2つも質問に答えちゃって、今回はさすがのわしもちかれたぞい。そろそろわしもコタツに入ってTVでも見ながら休むことにしようかの。じゃ〜みんな、よいお年をな。おっと、年末年始にコミックを読んで疑問がでてきたなら、わしに聞いてくれたまい。じゃな。
 

 

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