'03.02.16付け


 米では今週公開された「デアデビル」を幕開けに、アメコミ原作映画公開のラッシュが始まります。その波は初夏から日本にも押し寄せ、ヒーローたちの姿で賑わう銀幕が話題を振りまくことになるでしょう。 2001年の「スパイダーマン」の記録的ヒットの余波の一部として、こうしたビッグ・バジェットのヒーロー映画のほかにも、「ロード・トゥ・パーディション」などヒーローが登場しないコミック原作や、コミックを題材にした小さな規模のインディペンデント映画などにも注目が集まっています。
 今回は、いつもお伝えしている大作映画ではなく、ちょっと地味な、日本で見られるかどうかも怪しい?アメコミ映画の情報を中心にお伝えします。

「American Splendor」
 
 今年の1月末に行われた2003年度サンダンス映画祭にて、「アメリカン・スプレンダー」が審査員大賞(Grand Jury Prize)を受賞しました。
 サンダンス映画祭は世界最大規模で知られるインディペンデント映画の映画祭で、コーエン兄弟、ジム・ジャームッシュ、クエンティン・タランティーノといった監督を多数輩出し、インディペンデント映画制作者の登竜門として知られています。
 今年の大賞受賞作である「アメリカン・スプレンダー」は、40年近くもの間、休みながらではありますが、連載を続けてきた同タイトルのインディペンデント・コミックを原作としています。
 監督はシャリ・バーマンとボブ・プルシニ。彼らは夫妻によるチームで、これまでに幾つかのドキュメンタリーを制作しており、ドラマ映画の制作はこれが第一作目になります。 しかしこの映画では、コミック原作者であるハーベイ・パーカーが書いた脚本からなるドラマ部分に、監督らが原作者パーカー自身を追うドキュメンタリーが混ざり合い、虚実が一体となった構成になっているとのこと。この斬新な構成が、大賞の要因のひとつになっているようです。
 「アメリカン・スプレンダー」は音楽ライター、コミック・ライター、放送作家にして深夜番組のタレントなどの顔を持つ原作者ハーベイ・パーカーが、自伝要素を持つ作品として書き続けてきたコミックです。パーカーは現在60歳ですが、活動は続けており、最新刊は2002年の「アンサング・ヒーロー」(ダークホース・コミックス)です。
 「アメリカン・スプレンダー」の始まりは1960年代。近所に住んでいたロバート・クラムと知り合ったことがきっかけとなっています。クラムはのちにアメリカのポップカルチャーに強い影響を与えるコミック作家となる人物であり、その影響でコミック脚本を書いたのが始まりでした。パーカーの脚本による「アメリカン・スプレンダー」第一号はクラムによって作画され、1967年に発行されています。
 パーカーは幼少時はコミックに夢中の子供でしたが、成年となり、クラムに会うまではそれを忘れていたほどコミック文化からは“卒業”していました。しかし第一作目からコミック表現に目を開かれた彼は、その後も寡作ながらもコミックを書き続けることになります。 まるきり自伝であるものと、他人の物語を語りながら、やはり自分のことを表現したものを……。クラムの後、ヴァル・メイヤリック(「ハワード・ザ・ダック」)、ドン・シンプソン(「メガトン・マン」)、ジョー・サッコ(「パレスチナ」)ら多くのアーティストが「アメリカン・スプレンダー」の作画を手がけました。
 パーカーはこれまで、自分の人生の様々なステージ……妻となった女性との共依存関係や、80年代に深夜番組のゲスト出演者となるもその毒舌のためについに追い出されたこと、リンパ管腫となり闘病の日々を送ったことなどをコミックの中に赤裸々に語ってきました。 映画では、彼が若かったころのストーリー……昼は病院で事務職につき、夜は売れないコミックブックを書き続け、これでいいのかと日々を悩みつつ過ごす男のドラマが綴られていきます。
 この映画がいつ封切られるかはまだ未定。 サンダンスで大賞を受賞したことで、当初の予定よりは多くの映画館で封切られるようになるだろうと目されています。 

「Comic Book: The Movie」

 「スターウォーズ」のヒーロー、はたまたアニメ版「バットマン」のジョーカーの声優として、今やすっかりアメリカのポップカルチャーのイコンとなっているマーク・ハミルが、何と初監督作品にチャレンジしました。その映画タイトルも「コミックブック・ザ・ムービー」です。
 内容は、タイトル通り、コミック・ヒーローを主人公に据えた実写映画を撮ろうとするハリウッド・ピープルをドキュメンタリー形式で撮ったもの。といっても、これは「モキュメンタリー(mockumentary=mock(偽)+documentary(ドキュメンタリー)」、つまりはドキュメンタリーの形をとったコメディです。出演はビリー・ウェスト(「フューチャラマ」)、ジェス・ハーネル(「リロ&スティッチ」)、ロジャー・ローズ(「ラグラッツ:ザ・ムービー」)など、現在のハミルと同じ声優仲間が中心。彼らがプロデューサーなどの制作スタッフも勤めます。キャストには他にも様々なTVタレントの他、アメコミ界のスター作家スタン・リーも登場し、コミックらしい賑々しい画面を作ります。昨年、サンディエゴのコミックコンベンションで公開ロケを行ったりなどするなど、ファンに親和的なフィルムのようです。
 公開日などはまだ未定。上映されるのか、DVDリリースのみなのかもはっきりしませんが、コミック・ファンへのラブレターのようなものだというこの作品、できあがりが楽しみです。
 

「Comic Book Villains」
 
 昨今の映画ブームで、アメリカのコミックブックは現在価格高騰の一途をたどっています。アメコミは増刷されず、その性質から数も残らず、ある時期から投資対象とみなされるようになりましたが、近年はその競争がさらに激化。その現象そのものを題材に取り上げた映画が「コミックブック・ヴィランズ」です。
 小さな町にある2つのコミック専門店が物語の舞台。一つの店のオーナーは本当にコミックを愛するオタク、もう一つの店のオーナーはとにかく金目当ての利益追求型。おたがいに張り合うこの2店が、あるとき手つかずの稀少本コミックの山の存在を知ることに。そこへ、その数億ドル単位のお宝を狙う泥棒“ヴィラン”も介入してきて、静かな町は一転、欲望から発生する陰謀の渦の中へ……。
 監督・脚本は「スターマン」(DCコミックス)などで知られるコミック・ライターであり、米で7月の公開を控える「リーグ・オブ・エクストラオーディナリー・ジェントルメン」でも脚本を担当しているジェームス・ロビンソンです。
 しかし、この映画は不幸にも公開前にお蔵入りの命運をたどり、DVDリリースのみとなってしまいました。日本ではDVDリリースの見込みも薄そうですが、何とか機会がほしい気も……。

「Bullet Proof Monk」
 
 最後は、日本でも鑑賞が確実そうな映画の話題をお届けしましょう。米ではMGM配給で、4月公開予定のコミック原作映画「ブレットプルーフ・モンク」です。
 この原作コミックは1993年にイメージコミックスから発売された3号構成のミニシリーズ。ライターはブレット・ルイス(カートゥーンネットワークのコミカライズ作品など)とR.A.ジョーンズ(「グリーンランタン」)、アートはマイケル・アバロン・オーミング(「パワーズ」)。 また、コミックの編集と共著に、ゴッサム・チョプラ(米の降霊術者、自己啓発系本の著者として有名なディーパック・チョプラの息子)がたずさわり、今回の映画でもエクゼクティブ・プロデューサーをつとめています。 物語は米に在住するチベット人少年を主人公にしたカンフー・アクションですが、映画は原作をだいぶ脚色したもので、ストーリーも異なっており、少年はアメリカ人だし(演じるのは「アメリカン・パイ」のショーン・ウィリアム・スコット)、その少年を鍛えることとなるチベットの“無敵和尚(Bullet Proof Monk)”(チョウ・ユンファ)の方が主人公に近いということです。
 これは主演がチョウ・ユンファ(「グリーン・ディスティニー」)、ジョン・ウー(「ウィンドトーカーズ」)がプロデュースのビッグ・バジェット作品。 監督はこれが映画デビュー作となるポール・ハンター。現在までに、マイケル・ジャクソンやマライア・キャリーなどのミュージック・クリップを多数制作しています。 日本ではいつ来るかわかりませんが、これなら安心して待てそう?PLANET COMICS.jpでは日本公開の情報が入り次第、お伝えします。
 
 

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