by 石川 裕人

  ご無沙汰です。なんの因果か、現在、アニメのプロデューサーをしていましてすっかり久しぶりになってしまいました。
早速、本題ですけど、やはりこのご時世なのでスパイダーマンのネタを。
至福の2時間ちょいが終わって流れ出すエンドクレジット
ああ、そういえばマーヴルの極東事務所が開設されたのは、ジェームズ・キャメロンがスパイダーマンの映画が撮るという予定で、それなら商売になるだろうと、当時の社長のテリー・スチュワート氏がそろばんを弾いたからだったんだよなあ…。
結局、その約束は10年がかりで果たされたけど、事務所で一緒だったみなさんは、今頃どこでどういう気持ちでこの映画を見てるんだろうなあ…。
オープニングにも原作者としてクレジットされていたスティーブ・ディッコは映画のプレミアに来るのかなあ、そしてナゾの素顔を明らかにするかなあ…。
それよか、スタン・リーの目の黒いうちに完成してホントによかったなあ…。
きっとロミータ親子なんかと一緒に見るんだろうけど、考えてみりゃ、ギル・ケーンもロス・アンドルーもジム・ムーニーも、もちろんジョン・ビュッセマも、スパイディに縁の深い人たちもずいぶん亡くなってしまったなあ…。
などなど、暗闇で感慨にふけっておったワケですが、延々と流れるクレジットにかぶさる聞き覚えのあるイントロ…。
こりゃアニメの主題歌じゃないの!
私、ついつい大笑いしそうになりました。なぜかとゆーと…。

ちょい昔のこと、マーヴルは自前の情報誌『マーヴルエイジ』を発行してました。
『マーヴルエイジ』にはマーヴルの最新情報やら作家インタビューやら過去のマーヴルアニメの主題歌の歌詞やらに混じって、元祖アメコミパロディの雄、フレッド・ヘンベックのコミックが毎回1ページ載っていて、その独特のデフォルメセンスと超マニアックな内容にうならされてたわけですけど、93年頃だったかのその回の主人公はスパイダーマン。
ジェームズ・キャメロン映画化のニュースが正式発表されたのを記念しての登場でしたが、はじめこそ映画化を素直に喜んでいたものの、途中からなぜかキレはじめるスパイディ。
「いやもう、なにが嬉しいって、これでもうあのマヌケなテーマソングから解放されるってコトだよ!」
「なんとかの一つ覚えじゃないけどさ、毎年毎年、デパートのパレードに出る度に、調子っぱずれの高校生のブラスバンドにあの曲を演奏される身にもなってみてくれよ!」
「♪スパイダーマン、スパイダーマン、クモのやるこた何でもできる〜
♪巨大な巣を張って、ハエみたいに泥棒を捕まえる〜だと? バカにしてんのか!」
「でも、これでようやくあの屈辱の日々から解放されるんだ!」
高まる映画化(とクールな主題歌)への期待に、いやがうえにも盛り上がるスパイダーマン。
と、そこへ電話が一本が。
「はい、もしもし? …あっどうも、ご無沙汰してます」
急にかしこまるスパイダーマン、相手は一体?
「えっ? お前のは歌詞があるだけマシだ?」
「オレのなんか、ひたすらダダダダダダダダの繰り返しだぞ。ゼイタク言うな?」
「いやその、ごもっともっス。すいません。申し訳ないです、はい」
「そうだ。あのぅ、お背中の具合はどうスか? ビックリしましたよ! もう心配で心配で」
「あっ、あの2代目とか抜かしてる野郎ですけどね。気ぃつけた方がいいっスよ」
「じゃ、ホントお大事に。失礼します」
と、当時、ベーンに背骨を折られて療養中だったトンガリ耳の大先輩からの電話でオチになったわけですが、まさか、その待望の映画にまであのテーマソングがつきまとうとは!ライミ監督もあの回のコミックを読んでいたとしか思えない選曲に、大笑いしそうになった次第。
「二代目に気をつけろ」っていうのも、後にクローンサーガで自分の身に降りかかってるし、コウモリ先輩へのヘイコラぶりも、後の『スパイダーマン&バットマン』でそうだったし、鋭すぎるぞ、ヘンベック!

元祖アメパロ(?)のヘンベックですけど、なんとコミック本編を描いたこともあるのです。それがこの「ピーター・パーカー:スペクタキュラー・スパイダーマン #86」。
この号が出た84年1月は、「アシスタント・エディターズ・マンス」というイベントがあった月で、各誌の編集長がイベントだかなんだかで出払ってしまったため、アシスタントが編集の指揮を執ったところ、なれないせいで滅茶苦茶になってしまったという設定で、各誌がネタを競い合ったのです。
で、この「ピーター・パーカー」誌では、アシスタントのミスでパロディ作家のヘンベックに本編の依頼が行ってしまったという次第。ですから、絵はこんなでも、お話はいたってマジメというか、ちゃんとスパイディの正史の一部になっているのです。
シャレが効いているというか、余裕があったというか、やっぱ当時の総編集長のジム・シューターの全盛期だったんですねえ。(今回の映画関連の記事で、誰も彼のことに触れてない…栄枯盛衰ぃ〜)

PS. スパイダーマン、日本でも無事にヒットしてなによりですが、どうせならソニーピクチャーズも、JACの若手にロープ縛りつけて109から垂らすぐらいのハデなプロモーションやりゃ良かったのに、と無責任なことを。
 つーか、この映画がなければマーヴルの極東事務所はなかったってことは、自分がこうしてられるのもこの映画のおかげってこと?感謝の印にもう1回見に行こう!

過去のカエルマン


'02.2.15号
'01.6.16号
'01.5.29号


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