セス・フィッシャー インタビュー 1

<プロフィール>  Seth Fisher(セス・フィッシャー)
アメリカ生まれ。1991年からマンガ家を志し、1997年にライターのアンドリュー・ダブと共に「ハッピーデール」を創作。DCコミックス/バーティゴから出版され、コミック作家デビューを果たした。「ヘビーメタルマガジン」、パラドックス・プレスの「ビッグブック」シリーズ、「フランク・フラゼッタ・イラストレーション」などでコミックイラストレーションや短編を手がけたのち、2001年「グリーンランタン:ウィルワールド」で脚光を浴びる。繊細で細密なタッチ、ユーモアと独創性に溢れた世界観が人気を集めており、新作が出るたびに注目されているアーティストである。2001年に来日し、現在東京都在住。

近況:「ドゥームパトロール#13〜#14」でゲストアーティスト(#13は10/13発売、#14は11/6発売。表紙はレギュラーアーティストのタン・エン・ホワ)
ブリスターにてオリジナルTシャツ発売中。(デザインはこちらを参照)
Quick Japan44号(太田出版、既刊)に登場。

オフィシャルウェブサイト:Flowering Nose
コミックアートやコンピュータ・グラフィックなどを展示。ミニゲームや「ハッピーデール」ミニサイトもあり、原画やオリジナルTシャツの販売も行っています。

 今回は、日本在住のアメコミ・アーティスト、セス・フィッシャーさんにお話を伺いました。デビュー作「ハッピーデール」を経て、2001年の作品「グリーンランタン:ウィルワールド」で脚光を浴び、お話を伺った時は東京を舞台にしたコミック「バーティゴ・ポップ:トーキョー」が発刊されたばかりでした。最近DCコミックスとの専属契約を更新しており、正に今注目のアーティストです。
 今回のインタビューは「バーティゴ・ポップ:トーキョー」の制作にも協力したフリーエディターの柳 亨英さんにもおつきあいいただきました。(2002年7月12日)

○セスWORLD

--突然ですが、セス・フィッシャーさんは、出身はアメリカなんですよね?

Seth Fisher:生まれたのはウィスコンシン州です。生まれて3ヶ月しかいなかったけど。育ったのはサウス・ダコタ、すっごい田舎。高校生までいたけど、すごく逃げ出したかったから、もうちょっと都会のコロラドに出た。そこで数学を勉強して。

--数学ですか。それでコンピューターグラフィックをやるように? ネットで調べたんですが、「ミスト」にも参加されてたんですよね?

myst 3 パッケージ

Seth:そう。「ミストIII」のデザインをやった。この表紙に使われてる場面もデザインしたよ。

註/ミスト:カルトな人気を持つ3Dアドベンチャーゲーム。全世界で1000万本以上のヒットを記録している。最新作である「ミストIII 〜エクザイル〜」は、現在日本語版がマイピックから発売中。プラットフォームはPC、Xbox。
→公式サイト

Seth:でもコンピューターグラフィックスはね、子供のころからやってたよ。子供のころからずっと絵ばっかり描いてたんだけど、コンピューターもずいぶんやった。APPLE II Eで、16色しか表示できないやつで。

--すごい。古代の機種ですね。コンピューターのクラスとかがあったんでしょうか?

Seth:ううん、オレはもうすごい詳しかったし。APPLE II Eのプログラムは全部自分で書いてた。ゲームのプログラムを書いたりとかけっこう楽しいよ。絵も描いていて、両方とも好きだったけど、それが一緒になるなんて思ったこともなかった。コンピューターでは細かい絵は描けないじゃない、絵の細かさは出ないでしょ。絶対無理だと思ってたんだけど。結局この2つの趣味がすごく関係があったんだよね。偶然だけど面白いよね。

--うーん、セスさんの絵の細かさの表現はCGではちょっと無理ですよね。これを作ったら何日かかるか……あの、先ほど出身をお聞きしたのは、実は絵を見たときにヨーロッパ出身の方なんだろうと思ったからなんです。

Seth:うん、メビウスが高校生くらいか、大学生くらいからかな、すっごく好きだったから。こういう絵が描きたいと思ってすごい頑張った。でもまだまだね。メビウスはやっぱりめちゃめちゃうまいですよ。何でも出来る、ほんとに。

註/メビウス:本名ジャン・ジロー。フランス出身のアーティスト。世界観の独自性、デッサンの正確さ、絵の細密さ、質感、情感といった全てのコミック・アーティストが欲する才能を持ち合わせ、SF、ファンタジー、西部劇など、多ジャンルを描きこなす天才。日本では大友克洋が強い影響を受けた作家として有名。映画やゲームなど、多彩なジャンルで活躍するデザイナーでもある。

--ああ、なるほど。でも、やっぱりメビウスがいくら好きでも、また違う世界を作っていますよね。

Seth:そうだね、自分のスタイルはすごくある。オレは好きな絵を同じように描きたいってタイプじゃないから。メビウスならメビウスの強いポイントを取って入れていく。他の人の絵を見てもそう。そこから昇華していって自分のスタイルにする。オレは人の絵をまねるのがあまりうまくない。でもそれがかえってよかったけど。
 大友(克洋)も好き。でもキャラがあまり好きじゃないけど。ストーリーも完璧だし、アートはシンプルでダイナミックだよね。でもキャラはフラットな感じがする。メビウスは絵も完璧だしアイデアもすごい。なんでもコミックにできる、限りがない。

ヴァーティゴポップ トーキョー表紙

--今回の新作「ヴァーティゴ・ポップ:トーキョー」でも、また新たなスタイルを作っていますよね。すごくリアルに日本が描写されていて。ところどころに日本語表記のフキダシがあったりとか……

ヴァーティゴポップ トーキョー中ページ

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Seth:そうだね。日本人が話すところは表記を日本語にしたかった。全部じゃなくて、ほとんど英語で書いてあるんだけど、まあ少しでも入っているといいと思う。マンガは読んでいて主人公になるものでしょ。日本語のセリフがあれば、主人公の「日本語がわからない」気持ちがわかるでしょう。読者はセリフがわからないからちょっと頭にくるかもしれない。でもそれでいいんだよ。ガイジンは毎日そういう気持ちなんだよ。わからないことが目の前にたくさんあるから。
 でも日本のことをすごく興味がある人、そういう人もいっぱいいるよ、そういう人が読むとまた違う風に楽しめると思うんだよ。だから細かいギャグみたいな、ジョークがいっぱい入ってる。たとえばこのモザイクね。これはアメリカには全然ないものなんですよ。

--あ、そうなんですか? え、ボカシだってこと?

柳:いや、ボカシもない、全然ない、all or nothing だってこと。全部見えるんです。18歳以上は全部見てよくて、それ以下は一切見せないわけ。
Seth:そう、だからね、これアメリカのマンガだからモザイクは描かなくてもいいんだよ。だけど、日本だからこうなってる、てジョーク。日本人にはこれが普通だからあまり面白くないかもしれないけどね。

--アメリカ人はこれ見てどう思うでしょうかね。

Seth:日本に興味のある人だけわかるギャグだよね。日本語のことも一緒。日本語がわかる人はこのストーリーが深くまでわかる。ちょっとしかわかんない人は、ストーリーはだいたいはわかるけどわからないところもある。でもそれでいいんだ。

ヴァーティゴポップ トーキョー中ページ その2
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--よくアメリカのコミックで日本語看板の表記とかあるとグチャグチャになってるんですよね。「トーキョー」ではさすがというか、きちんと描かれてますね。……あ、これよく見るとセスさんの看板ですね。

Seth:いつも描いてるよ。セスワールドだから。

--じゃもしかして他の作品にも?

Seth:探せばいるよ、いっぱい。
柳:よくモブシーンに入れてるよね。
Seth:そう。オレ、絵の中にサイン入れないんだよ。だからその代わりみたいなことで。

--アメコミの作家は、絵の中に自分のサイン入れる人が多いですよね。

Seth:そう、あれは意味が分からないよね。せっかくきれいに絵を描いたのに汚すみたいなことでしょ。だからそうじゃなくて似顔絵入れたりとか、看板に名前を書いたりとか。でもこれ、読者の人は気がつかなくてもいいです。自分の楽しみで描いてるから。マンガって自分一人でずっと描いてるでしょ、だからこれくらいの楽しみがあったって……(笑)。

<第2回に続く>


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