アメリカで漫画家デビュー
中塚真 インタビュー

 ブルータス(マガジンハウス)4月1日号のコミックヒーロー特集で「アメリカデビューする新人漫画家」として取り上げられた中塚真さん。掲載時にはすでに脱稿していた「ヴァンピ #16」(ハリス・コミックス)が先日発売された。これが中塚さんの海外における実質的な商業誌デビューとなる。メールや電話、海外便など、コミニュケーション・ツールが発達するに従って、このように国を問わず仕事をする人々や、その機会が今後も増えていくに違いない(そうした事に興味がある方は、PLANET COMICS.jp内のマーヴル・コミックス漫画家募集のページへ

<プロフィール>
中塚 真 
1971年生まれ。少年誌をフィールドとして、漫画家・ゆでたまごのアシスタントをつとめるかたわらで活動、手塚賞(96年)など、各新人賞も受賞している。98年、「ワイルドキャッツ日本語版」(メディアワークス)に出会ったことをきっかけにアメリカンコミックに興味を持つ。今年「ヴァンピ#16」でデビューを果たした。

--まず、スタンダードな質問から。中塚さんが漫画家になりたいと思ったきっかけは何でしょうか?

 漫画家になりたいと思ったのは10歳くらいです。一番最初は子供の時、熱を出して寝ていたときに読んだ「ドラえもん」が面白くて・・・ それでコロコロとか読んでいたかな。
 小学生くらいからジャンプなんかを読むようになって、キン肉マンなどの当時流行っていた漫画の洗礼を受けました。そのころから漫画家になりたいと思うようになって。ラクガキですけど、漫画を描くようになりました。でも、本格的に漫画を描きだしたのは22歳くらいからなんです。
 
--その頃はまだアメコミは読んでないんですよね。いつごろ、どうやってアメコミに出会ったのですか?

ワイルドキャッツ日本語版4巻

 メディアワークスの「ワイルドキャッツ日本語版」4巻の表紙を本屋で見かけたのがきっかけです。それはジム・リーの描いた絵で、今まで自分が思っていた「アメコミ」というイメージと全然違うので、びっくりして。アメコミに興味を持ち、他にも「ジェン13」とかのアメコミを買うようになりました。アートを見たくて原書を買うようにもなりました。アメコミのアートの素晴らしさに感動したんです。

--それで、アメリカまでジム・リーを訪ねたそうですね。

 そうです。僕の師匠はゆでたまご先生なんですけど、一緒にサン・ディエゴのワイルドストームに行かせてもらいました。そこでアメコミの作業工程を見たり、ジム・リーやトラヴィス・チャレストといった作家に会えたりしました。そのツアーがきっかけで出会えたエージェントを通じてアメリカでの仕事が出来るようになったんです。
 僕は雑誌に作家登録もしていますし、読み切りが掲載されたこともありますが、連載とかいうようなデビューはまだなんです。そういう状態がちょっと長かったこともあって、今回こういう話がきたのでじゃあ、やってみようかと。 

--「ヴァンピ#16」では、どのようにアメリカ側と一緒に仕事をしたのですか?

VANPI#16
カバー・アートは原作者ケビン・ラウ。
Vampi R is a trademark of Harris Publications. All Rights Reserved. Used with permission.
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「ハリス・コミックスの依頼で描いたヴァンピです。だいぶ前に描いたものなので、今回コミックに描いたものとは顔が違いますが」
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「これはオリジナルです。『ACME21』というタイトルで考えていた作品のカットです。
上の女の子、アクメが主人公のSFアドベンチャーです」
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「これも『ACME21』カットです。コンピューター彩色をしてみました。カラーはできればやりたいですが最近は時間がなくて」
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「これは『ACME21』のSF設定を発展させて少年を主役にしてみたものです。少年誌掲載を想定していたので。右が主人公、左はライバルです」
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 向こうからスクリプトが来て、それをエージェントが訳してくれたものを見てコンテを切ります。その時点でやりとりをして、向こうからオーケーが出れば描いて、ペン入れまでをやりました。カラリングとレタリングはアメリカ側で行いました。
 
--じゃあ、こうして本になった物を見て、はじめて自分の作品が最後にどうなったかわかるわけですね。どうですか、カラーと字が入ると。

 レタリングはだいたい想像通りでした。ただ、今回は効果音なんかが思ったより入らなかったんで、効果音が入るともっと迫力が出ると思っていたページもあったんですけど。カラーは、入るのは初めてなので、こんなものかなあという感じですね。

--今回はアメコミということを意識して描いたところはあるんですか。
 
 メリハリは出そうと心がけましたね。あとは漫画だとあまりコマを重ねたりはしないんですが、アメコミではよくやっているので僕もやってみました(笑)。でもやっておいてよかったと思います。今回ははじめての事が多かったですね。両たちきりというのもはじめてでしたし。
 こうしてできあがった物を見て、次はもっといいものを描こう、と思いましたね。
 描いているときはもう少し、自分ではいいと思っているんですけど、できあがった物を見ると・・・
 今回思ったのは「インカーの仕事って奥深いんだな」ということでした。日本の漫画ではあまり、ペン入れって重要じゃないじゃないですか、ただ線をなぞるだけで。でもインカーの仕事は芸術的ですよね。影のつけ方も上手だし立体的なんですよ。線の強弱が生き生きしてるんですよね。比べると、自分の絵では線が死んでいるなあと・・・
 本当にいろいろ勉強になりました。
 
--読者の目でこのコミックを見ると、中塚さんの絵には2つの大きな特徴があると思えます。ひとつは「アメコミっぽさ」で、もうひとつは「日本のスタンダードな少年誌っぽさ」です。こうしたことをお聞きしたいのですが、たとえばこの「ヴァンピ」ではパースの効いた構図や表情の付け方がやはりアメコミを思わせます。これは意識して描かれているところがあるのでしょうか?

 パースを描くのはけっこう好きなんです。人体なんかもパースつけるのが好きで。アメコミから影響は・・・受けたかもしれないけど、意識してマネしたりとかはないです。やっぱり好きだから似てしまうとかは、あるかもしれないですけどね。
 
--それから、アクションシーンやキャラクターの強くてかわいい雰囲気にある「少年誌らしさ」は・・・

 自覚してなかったんですけど、本になったのを見て自分でもそう思いました。やはり普段仕事しているのが少年誌だからかな・・・

--もともとの中塚さんのカラーなのですね。では、今までに、影響を受けた漫画家さんなんかはいるのでしょうか?

 漫画家というか、絵の面で強い影響を受けたのは子供の時見たアニメ「オネアミスの翼」です。僕が描く女性の顔は全然違うと思うんですけど、おっさんの絵なんかは似てるんです。一時期に比べると、最近はちょっと離れてきたかなと思いますが・・・

--では影響を受けた、受けないに関わらず、好きな漫画や漫画家は?
 
 諸星大二郎、水木しげるとか・・・漫画はそんなに読まないんですけど。最近は「ヤングキング」(少年画報社)に載っている吉田 聡の「荒くれKNIGHT」が面白いです。
 アメコミでは「X-メン」を描いていたレイニル・フランシス・ユーや、クリス・バチャロのアートが好きですね。

--独特の世界観を持つ漫画家がお好きということでしょうか。中塚さんのオリジナル作品のイラストを見てもうなずけますね。スペース・オペラの世界観が面白いですが、中塚さんくらいの年代だとあまりスペース・オペラを志すという人は少ない気がしますが・・・

 そうですね。自分でも何でスペース・オペラが好きなのかははよくわからないんですけど。この「ACME21」は高校生のとき原案を考えました。
 
--全体的にデザインがかわいいですね。

 こういうデザインを考えるのは好きです。あまり硬質なデザインは好きじゃなくて、かわいさとかっこよさがテーマです。女の子が主人公なのは、「タンク・ガール」が好きなのでそういう子を出してみたんです。
 
--かわいさとかっこよさの融合ですね、よくわかります。中にカンフーっぽい色合いがあるイラストがありますね。カンフーはお好きなんですか?

 好きですよ。ジャッキー・チェンの「酔拳」なんか。漫画では「拳児」が好きです。
 アクションシーンを描くのは好きですし、印象的に描けたらいいなと思っています。
 
--ありがとうございました。最後に、これからアメリカデビューを志す、志したい、という方々に向けて何かメッセージを。

 僕もまだ入り口に立ったところで勉強中なので、アドバイスみたいなことはとても言えませんけど。
自分がイメージしていることの5、6割しか表現できないので、なるべく妥協しない方がいいですね。
 僕は週4日はアシスタントに行っていますし、体調も崩したので大変でもありましたが、この本が出たことは本当に嬉しかったです。夢がかなったという喜びでいっぱいになりました。
 


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