初の全米図書賞ノミネートになったグラフィックノベル

 全米図書協会が主宰する「全米図書賞(National Book Awards)」に、初めてグラフィックノベル(コミックの別称。画で描いた小説という意味で、娯楽色より読み応えを重視したものをこう呼ぶことが多い)がノミネートしました。
 
 全米図書賞はアメリカで最も権威ある文学賞のひとつと言われ、数々の有名作家・作品が生まれるきっかけともなっています。

 ノミネートされたコミックのタイトルは「アメリカン・ボーン・チャイニーズ(American Born Chinese)」。このタイトル通り、作者は中国系アメリカ人のジーン・ルエン・ヤンです。コンピューター・サイエンスを受け持つ学校の先生で、休日にコミックを描く生活を送っています。
 ノミネート部門は児童文学部門ですが、内容は全年齢向けといった感じで、幼い児童むけというわけではありません。

 このコミックは3つの中篇からなる本。ひとつは「西遊記」をベースにした話。もうひとつは、チャイナタウンに生まれたのに、中国系がまったくいない小さな町に引っ越し、戸惑う中国系少年の話。そして、アメリカの古いコミックにおどけ者としてよく出てくるデフォルメ中国人を題材にした「チンキー」です。どれも、アジアン・アメリカンとしての自分のアイデンティティを見つめるまなざしによって描かれています。
 絵はシンプルな線で描かれ、デジタル・カラリングで仕上げてあり、誰にでも読みやすいものです。
コミックのプレビューは出版元のファースト・セカンド・ブックスで見られます。(Read an Excerptをクリック)

 この児童文学部門の選考候補は255冊ありました。その中から選ばれたのですからノミネートだけでもなかなかの快挙と言えます。
 この本はAmazon.comのエディターが選ぶ2006年ベストコミック/グラフィックノベル10、およびパブリッシャーズ・ウィークリーが選ぶベストグラフィックノベル10にも選ばれています。
 
 Amazon.comとパブリッシャーズ・ウィークリーのリストには、スーパーヒーローものがひとつも入っておらず、いわゆる「グラフィックノベル」ばかりです(Amazonのリストの2つめにある「ラスト・クリスマス」は世界滅亡のあとにサンタが起ち上がり、クリスマスを奪還する戦いに挑む話で、ヒーローもののジャンルと言えなくはないかも)。
 ヒーローものはほとんどがシリーズ展開なので紹介しづらいのと、エディターがもとからヒーローコミックを除外して作っているからかもしれません。が…
 近年、ヒーローものばかりが幅をきかせてきたアメリカのコミック業界の中で、日常に題材をとったり、作者の個性を発揮したオリジナルのストーリーを展開するグラフィックノベルは、地道ながら確かにじわじわと台頭してきています。
 この台頭には、日本のマンガの流行も影響していると識者は見ているそうです。(Inside Bay Areaの記事による)

関連Link>>
Humble Comics.com
ジーン・ルエン・ヤンが自費出版のために作った出版レーベルの公式ホームページ。「アメリカン・ボーン・チャイニーズ」ほか、アジアン・アメリカンが主人公のコミックを何冊か発行しています。

・米「パブリッシャーズ・ウィークリー」誌の選ぶ2006年グラフィックノベル・ベスト10に日本のマンガが1作品ランクイン。(英語で!アニメ・マンガ)
 Amazon.comとパブリッシャーズ・ウィークリー共にベスト10にチョイスされているグラフィック・ノベルを紹介している、わかりやすい記事です。

全米図書賞(Wikipedia)
posted at 04:07:24 on 2006-11-22 by Mitsuoka - Category: 国内ニュース TrackBack: - このエントリーを含むはてなブックマークこのエントリーをはてなブックマークに追加


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